飛龍の拳シリーズ
エピソード
トリビア
1987年2月14日にカルチャーブレーンからファミコン向けに発売された飛龍の拳 奥義の書は、格闘ゲームがまだ定番になりきる前の時代に、対戦の駆け引きと道中の冒険を一つに束ねた一本だ。価格は5500円で、容量は1メガビットに64キロのRAMを積む構成とされる。出発点は1985年のアーケード作品で、北派少林 飛龍の拳として対戦部分だけで組まれていたが、家庭用へ移す段階で横スクロールの道中が足され、試合と旅を交互に進めるシリーズの型がここで固まった。初期生産分のパッケージや説明書に日本ゲーム名義が残るという記述もあり、作り手側の看板が切り替わる節目の気配まで紙面に封じ込めている。北米では1989年にFlying Dragon The Secret Scrollの題で発売され、その後はWii Uのバーチャルコンソール配信やプロジェクトEGGでの配信も行われたが、EGG版は2022年7月31日に終了している。
遊びは大きく二つに分かれ、道中を進む横スクロールのアクションと、相手と向かい合う試合パートが交互に噛み合うように作られている。道中では敵をさばきながら進み、要所で立ちはだかる相手に勝てば、先へ進むための鍵になるアイテムを手に入れる。一定の条件が整うと大会へ進み、ここからが作品の顔である心眼の読み合いになる。試合では自分と相手の身体に印が現れ、上段中段下段のどこを攻めるか、相手が狙っている位置をどう守るかで流れが決まる。印は赤マークや青マーク、秘孔マークが混ざり、見えた瞬間に攻防の判断を切り替える必要がある。画面上にはライフやKOゲージも表示され、KOゲージをためて必殺の飛龍の拳を狙う見せ場が生まれる。見た目は格闘でも、中身は印を見て手を読む駆け引きが主役で、奥義という題名が看板だけではないと納得させる。
物語は、龍飛峰で育った少年の龍飛が、育ての親で武芸の師でもある寿安老師を失い、奪われた必殺奥義の奥義書を追って旅に出るところから始まる。手元に残った心眼の書を少林寺の貫主である元涯に渡し、心眼の極意を授かった龍飛は、異種格闘技世界大会へ挑んで龍の牙の野望へ近づいていく。大会の果てで龍魔王フーズ フーと向き合う筋立ては、タイトルの奥義の書という言葉を単なる飾りにせず、心眼というシステムの存在理由に変えている。道中モードと大会の切り替えはこの筋立てと相性が良く、旅で得た鍵になるアイテムが次の進行を開く流れは、家庭用らしい工夫として気持ちよく機能する。龍の牙がシリーズの顔として初登場し、ハヤトやミンミンがまだ仲間ではなく対戦相手として置かれている点も、後の作品を知るほど小さな発見になる。パスワードがゲームオーバー時にしか表示されない仕様は、進行の重みと引き換えに、負けた悔しさを次の挑戦へ変える燃料にもなる。主要スタッフには阿迦手観屋夢之助の名が挙げられ、MobyGamesのクレジットでは音楽担当としてShunichi Mikameが無記名で載っている。
この作品が残した一番の爪痕は、格闘を単独の舞台に閉じず、旅の時間や鍛錬の手触りまで込みで奥義の物語にしてしまったことだ。アーケード側ではタイトーから稼働した北派少林 飛龍の拳が上海キッドとして海外展開されており、その一対一の強さを土台にしながら、家庭用では横スクロールの道中を足して手元の冒険へ変換した。続編では変身の演出や法力など要素が増え、パスワードもゲームオーバーを待たずに使える形へ変わっていくが、奥義の書の段階は心眼と闘気に絞っていて、設計の骨格が見えやすい。Wii Uの配信が2014年に始まり、海外では2015年にPAL向けにも配信され、EGG版が2018年に登場して2022年に終わったという履歴まで追えるのは、権利が動く現代の現実そのものでもあり、遊べた時期が記録に残るほどに今の欠落が際立つ。画面の荒さや動きの癖を抱えたままでも、試合が始まると背筋が伸びる、その古い熱の残り方が、このシリーズの原点らしい余韻になる。
NAO総評
演出と音楽が格好良くて手が動くのに、道中と試合の切り替えが唐突で、テンポが崩れた瞬間に集中がほどける。けれど心眼の丸印は、相手の癖を読む理屈をちゃんと持っていて、反射神経だけに寄らないのが偉い。奥義という言葉の大げささを、パスワード制の緊張と小さな駆け引きで成立させてしまうあたり、家庭用初期の野心がそのまま残っている。荒さも含めて、やる気が出るという感想がいちばん正確で、当時の空気の濃さまで伝わってくる。
出典:NAONATSU総評
戦闘のもっさり感すら愛せたという気持ちが分かるのは、心眼で相手を読む瞬間にちゃんと緊張が生まれるからだと思う。道中で転んでやり直しても、次こそ勝てると信じられる音楽と演出があって、奥義を目指す旅の大作感に胸が温かくなる。パスワードが取れるまでが遠いぶん、夜に一面ずつ進めた記憶や、友だちと必殺技の名前を言い合った時間までよみがえってくるの。だからこそ勝ったときの小さな達成感が、今でも静かに残っている。
出典:NATSU
📘 説明書資料(飛龍の拳 奥義の書[NFC-HR])
説明書:Internet Archive 所蔵版(飛龍の拳 奥義の書[NFC-HR])
※Hiryuu no Ken - Ougi no Sho [NFC-HR](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。
















発売日:1987/02/14|価格:5500円|メーカー:カルチャーブレーン|ジャンル:アクション
NAO: 演出と音楽のカッコよさが記憶に残る。やる気出る!
NATSU: 戦闘のもっさり感すら愛せたあの頃。心眼!