くにおくんシリーズ
エピソード
トリビア
熱血硬派くにおくんは、アーケードで稼働した乱闘ものを、1987年4月17日にファミコンへ持ち込んだ作品だ。元は1986年5月にタイトーから稼働したベルトスクロロールのアーケード作品で、横へ進みながら画面内の群れを片付けるという形を早い段階で固めていた。メーカーはテクノスジャパンで、価格は5300円、ジャンルはアクションになる。画面の中で一人が多数を相手にする殴り合いを正面に据え、ツッパリ文化が濃かった八〇年代の空気をそのままゲームの肌触りにした。主人公の名は社内の人物に由来し、タイトルも別作品のもじりから生まれたとされる。内輪の勢いで始まったはずなのに、のちの同ジャンルの原型として語られるところまで駆け上がったのが面白い。さらに当時としては珍しい音声演出もあり、コイン投入時の効果音にボイスを使ったという点まで含めて、乱暴さと新しさが同居している。
遊びは派手さより理屈と苛烈さが先に来る。レバーとボタンで操作し、左右それぞれの攻撃ボタンを使い分けるのが最大の癖だ。向いている側は連打できるパンチ、反対側はリーチが長い後ろ蹴りで、背後の敵に目を配りながら立ち回りを組み立てることになる。ダッシュや飛び蹴りもあり、壁に触れて反転しながら蹴りを出す動きまで用意されている。敵を何度も叩いて屈ませると襟をつかめて、ヒザ蹴りと背負い投げに切り替わる。投げた先に別の敵がいればまとめて倒せるので、狭い画面でも群れをさばく快感が出る。馬乗りになって殴る場面もあり、ボスには体力条件が絡む一方で、起き上がり直後の判定が残る不具合を利用すると一気に削れるという、時代らしい荒さもトリビアとして残っている。ステージは四つで制限時間があり、体力と残機を併用する。ボスを倒すと次へ進み、四つを抜けるとまた最初へ戻るループ構造で、一定得点で残機が増える。駅のホームのボスは後にライバルとして語られるりきで、端へ押し出すと落下で即座に倒せる反面、自分が落ちても一発で失敗になる。湾岸の暴走族戦も同じく海への落下が危険で、足場が最大の敵になる。ディスコ周辺ではスケ番集団が相手になり、番長のみすずはつかみからの連続攻撃で体力を削ってくる。終盤では刃物や拳銃の攻撃まで飛んで来るため、熱血より先に理不尽が顔を出す。
ファミコン版では、容量と表現の都合で同時に出る敵が減ったとされる代わりに、家庭用らしい追加が入った。ステージ一では電車内での戦いが足され、舞台の扱いも変わっている。ステージ二は沿岸の乱闘だけで終わらず、バイクでのチェイスを挟んでボスへ向かう。ステージ三にはルート選択があり、番長との決戦を避けて進める道まで用意された。物語も家庭用向けに調整され、友人ヒロシがやくざに連れ去られ、くにおが救出へ動く筋立てになる。こうした追加がある一方で、元が持っていた荒っぽい密度は薄れ、技と判定と理不尽さがぎゅうぎゅうに詰まった感じだけが濃く残る。パンチにキックに投げ技まで一気に襲いかかり、息継ぎの暇がないという意味で、遊ぶ側は胸焼けするほどの熱血を味わう。
開発を指揮した岸本良久は、自身の高校時代の感覚を題材にしたとされ、日々のケンカの手触りをゲームの動きに落とし込んだ。さらに武術映画の影響も受けたという。海外ではタイトルがRenegadeに変わり、主人公も街の喧嘩屋として描き直され、恋人救出の物語へ置き換えられた。見た目は映画の不良像を意識した別物になり、舞台も日本の街からブルックリンへ移される。変換の過激さは、当時の輸出ゲームが抱えた翻訳の荒々しさそのものだ。そこから派生して、Renegade名義で非公式の続編が作られたことも知られている。一方で日本側では、この作品がくにおくんの系譜の起点になり、同じ顔が学園や街へ広がっていく。復刻も続き、Wiiやニンテンドー3DSやWii Uのバーチャルコンソールで遊べる形になったほか、アーケード版もアーケードアーカイブスとして現行機へ届き、2011年にはニンテンドー3DS向けのリメイクも出ている。2015年にはアークシステムワークスがくにおくんを含む旧テクノス作品の権利を引き継いだと公式に発表し、シリーズが現行へつながる道筋が整った。家庭に詰め込まれたアーケードの情熱は、転校生のように場違いな濃さで居座り、今もなお乱暴な時代批評として動き続ける。
NAO総評
パンチにキックに投げ技、馬乗りまで全部載せで、技の棚卸しが終わる前に次の相手が押し寄せる。勢いは痛快なのに、ホームと海の落下即死や時間切れが平然と待ち、熱血の看板の裏で理不尽がきっちり仕事をする。作者の高校時代や武術映画の影が見えるのに、タイトルはもじりで主人公名は社長由来という雑さも同居する。海外では別名で別設定に着替え、同じ型だけが独り歩きした。無茶と時代性の混ぜ方が露骨で、胸焼けするほど強烈に残る。
出典:NAONATSU総評
アーケードの空気をそのまま家のテレビに詰め込んだ感じがして、起動した瞬間に当時のざわめきが戻ってくる。操作は癖があるのに慣れると気持ちよく、転校生みたいに濃い存在感で居座る。ファミコン版の電車内やバイクのチェイス、ルート選択みたいな追加も、家庭で遊ぶための気遣いに見えてうれしい。友だちがやられても代わりに立つみたいな熱さがあって、負けても不思議と笑える。権利が受け継がれて今も遊べるのも、あの情熱が消えていない証拠に思える。
出典:NATSU
📘 説明書資料(熱血硬派くにおくん [TJC-KN])
説明書:Internet Archive 所蔵版(熱血硬派くにおくん [TJC-KN])
※Nekketsu Kouha Kunio-kun [TJC-KN](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します























発売日:1987/04/17|価格:5300円|メーカー:テクノスジャパン|ジャンル:アクション
NAO: パンチにキックに投げ技まで、当時の熱血が詰まりすぎてて胸焼けするレベル。
NATSU: アーケードの雰囲気そのまま、家庭用に詰め込んだ情熱。ファミコン界の転校生。