エピソード
トリビア
1987年8月10日にトーワチキから定価5300円で発売された『エルナークの財宝』は、見下ろしのアクションに謎解きを混ぜた、遊び手を迷子にさせることから始まる作品だ。遺跡へ向かった友人を追うという導入は分かりやすいのに、画面に立った瞬間から自分の頭の中だけが置いて行かれる。上下左右にしか動けず、同じ景色を何度もなぞるうちに、敵より先に地形に負けた気分になる。ここで押し返されるのは腕前というより読解の姿勢で、初見の辛さはそのまま作品の顔になる。玩具なども手がけた会社が送り出したファミコン作品という出自も、当時の雑多さを感じさせて、正解の導線が太くないまま箱だけが店頭に並んでいた光景まで想像させる。早い段階からループや行き止まりにぶつかるのに、どこかに必ず続きがあるという確信だけを頼りに歩かされる。気力がある日しか触れない一本という印象が、触る前から正解として出来上がってしまうのも、このゲームらしい。
遊びの核は二つある。ひとつは、Aで飛び道具を放って敵をさばくアクションとしての手触りで、敵の弾は主人公の方向へ放たれつつ少しだけずれて飛ぶため、見た目以上に避けづらい。もうひとつがBで聖なる石を使い、岩や木や柱のような物に封じられた言葉を探す仕組みだ。言葉は大げさな演出で教えてくれないし、読める時間も長くはない。しかも全てがカタカナで流れていくから、読む速さそのものが攻略条件になる。急いで読んでいるのに、次の画面へ自動で進んでしまう場面があるのも焦る。だからプレイ中に自然と身に付くのは、戦いのリズムよりも確認の癖だ。目につく物に石をかざし、拾った物の効果を疑い、ゲージの動きを覚える。画面下にある性格ゲージはライトとダークの間を揺れ、アイテム取得などでどちらかへ寄っていく。説明書はダーク側の方が強いと示しつつ、どちらを選ぶかで結末が変わると匂わせた。けれど終盤ではその状態が進行に影響し、特定の状態で通らないと先が破綻する場所がある。強い方へ寄せれば楽になるはずという期待を、いちど裏切ってくるのが厄介で、ここで何を拾うかが何を切るかを上回ってしまう。裏側の話がこの作品の最大のトリビアだ。発売当時は理不尽な謎と強いアクションが組み合わさり、攻略本も出なかったため、正攻法での突破が広く共有されるまで時間がかかった。実際に発売から13年後の2000年冬、個人のプレイヤーがクリアに成功し、その映像がテレビ東京系の番組で紹介されたという経緯が残っている。行き詰まりの理由として語られたのは、プロローグで示されるアイテム効果に誤情報が混ざっていたことや、ゲージの目盛りの数字そのものが重要だったことなど、プレイ中に自然には気づきにくい部分だった。さらに説明書に致命的な誤情報があったという噂は、同社の別作品の話が混同された可能性が高いとも整理されていて、誤解の連鎖まで含めて難しさが育ってしまった。MobyGamesのクレジットでは開発をNovaとしており、作品の輪郭がはっきりしにくい時代の空気も見える。StrategyWikiには当時の販促物が画像として残り、見下ろし型の冒険として紹介されている。今の時代なら情報共有で救われるはずの所を、当時は自分の手で抱え込むしかない。だからこそ、苦行の先で道がつながったときの手触りは強烈で、理不尽さの中に手作りの仕掛けが確かに残る。遊び手の気力を削るのに、最後は妙な愛着だけを置いていく。一本道の爽快さではなく、答え合わせまで含めた長い迷子の記憶が残る。1987年のファミコンが持っていた、説明の足りなさと挑発の強さが、そのまま遺跡の空気になっている。
NAO総評
見下ろしの画面で迷い続けるのに、解決の鍵が何を切るかより何を拾うかへ寄っているのが意地悪で面白い。しかも正攻法の答え合わせが広く知られるまで十三年かかったという逸話が、作品の不親切さをそのまま歴史に変えてしまった。攻略本が欲しくなる設計だと苦笑しつつ、情報が雑誌と口コミに偏っていた時代の空気まで封じ込めた一本だ。
出典:NAONATSU総評
初見だと何が起きているのか分からなくて、同じ景色を何度も歩かされる感じが本当に苦しい。敵の弾もじわっと当たって、体力だけが削れていくのに、正解の行動は画面の中にほとんど書いていない。でも聖なる石で言葉を拾えた瞬間だけ、遺跡に呼ばれている気分になる。気力がある日に少しずつ進めると、理不尽さの奥に手作りの謎解きが見えてきて、忘れられない苦い思い出になる。
出典:NATSU
📘 説明書資料(エルナークの財宝 [TCC-EL])
説明書:Internet Archive 所蔵版(エルナークの財宝 [TCC-EL])
※Elnark no Zaihou [TCC-EL](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。












発売日:1987/08/10|価格:5300円|メーカー:トーワチキ|ジャンル:アクション
NAO: これぞ攻略本ありきの構成、13年の重み。。
NATSU: 初見プレイは苦行、気力ある人向け