エピソード
トリビア
エアー・フォートレスは1987年8月17日にHAL研究所から発売されたシューティングで、価格は5300円だ。箱とタイトルだけを見ると宇宙の要塞へ突っ込む王道の出撃ものに見えるのに、実際に手を動かすと最初のつまずきが早い。外側の接近戦は横スクロールの撃ち合いで、被弾や接触がほぼ即失敗になるため、気分は爽快さより緊張に寄る。それでも突破してエアロックへ辿り着くと、今度は歩きの侵入戦に切り替わり、視点もリズムも別物になる。前半後半に分かれた構成が斬新だという評判はその通りだが、初見では斬新より戸惑いが勝ちやすい。出撃の勢いのまま奥へ進むと迷子になり、迷子のまま核心へ近づくと、さらに脱出という別の焦りが始まる。
システムは二段構えで、外側では小型艇で要塞へ接近しながら防衛網を抜け、内側では装甲戦闘服の主人公が迷路状の通路を探索して中枢を破壊する。資料では八つの要塞へ順に挑む構成とされ、外側はエアロックへ辿り着くまでに挑戦回数の制限がある。外側の途中でエネルギーや強い弾薬を拾えるという説明もあり、それを持ち込めたかどうかが内側の安全度に響く。内側の操作はジャンプではなく噴射で浮く感覚に寄っており、歩きと言っても地に足がついた安定ではなく、重力が薄い場所を滑るような癖が残る。ここで効いてくるのがエネルギーの考え方だ。移動や攻撃そのものがエネルギーを消費し、立ち止まっていると回復する。つまり上手い人ほど走り回って失敗し、慎重な人ほど一歩ごとに整えて進める。この作品が面白いのは、二部構成が単なる気分転換ではなく、前半の成果を後半の生存へ変換する仕掛けとして機能している点だ。ただし核心を壊したあとの脱出は猶予が短く、入ってきた場所と出口が同じとは限らないため、勝ったはずの局面で迷い直す。その理不尽さが、出撃後に歩きになるのが好きだった人の記憶に残る。
裏側の情報として確かなのは、開発と発売の双方をHAL研究所が担い、制作者クレジットに岩田聡がプロデューサーとして名を連ねることだ。ディレクター兼デザイナー兼プログラマーとして菅浩明が記録され、追加開発としてLive Planningの名も挙がる。作曲者として金指秀記が記録されている資料もあり、硬い画面のわりに旋律が耳に残るのは、この時代のHALらしい粘りだ。物語の主人公名がハルであることも含め、当時のHAL研究所が自社色を前面に出していた雰囲気が読み取れる。海外ではHAL Americaが販売し、通信販売の広告キャンペーンでTシャツを付けた販売が行われたという記録が残る。また英語圏の資料では、1987年にごく少数の試験的な販売があったともされ、正式には1989年に北米で発売された。同じ要塞へ突っ込む話でも、日本版と海外版で復帰の扱いが違うという説明があり、当時の移植で難度調整が行われた一例として語られている。
印象的要素は、派手な演出よりも、切り替わりの瞬間そのものだ。外側でようやくエアロックへ辿り着いたと思ったら、突然ひとり歩きになり、周囲の金属音が増える。前半は撃つか避けるかで迷いが少ないのに、後半は進むほど迷いが増える。それでも立ち止まれば回復するから、迷子になった人ほど呼吸を整え直せる。そして核心を壊したあと、今度は迷いを許されない脱出へ追われる。上達の実感は派手なレベルアップではなく、前半で余裕を作り、後半で焦りを抑え、最後に道を覚えるという地味な積み重ねでやって来る。見た目ふわふわ中身はガチシューティングという短評は、まさにこの落差のことだ。独特の経済システムがクセになるという感覚も、前半で拾った余裕を後半で使い切る流れに近い。出撃の高揚と、歩きの孤独と、脱出の心拍数が一続きになり、夏の夜の手元にだけ残る。
NAO総評
二部構成が斬新だと思って始めたのに、前半の一撃死でまず心が折れる。後半に入ると今度は迷路と自爆までの時間で追い立てられ、シューティングの勢いが別の遊びへ裏返る。その落差が嫌われもするが、エネルギー管理と静止回復を覚えると、焦りが手触りに変わっていく。外側で稼いだ弾や余裕を、内側で食い潰していく設計が冷たい。そして主役の名がハルなのも、会社の看板を背負わせた時代の勢いを感じる。出撃して歩きになる瞬間の妙な孤独感こそ、この時代の硬派さだ。
出典:NAONATSU総評
出撃して飛んでいたはずなのに、要塞へ入った途端に歩きになって、急に自分の呼吸だけが聞こえる気がする。その切り替わりが大好きだった。迷って戻れなくなることも多いけれど、動いたり撃ったりするだけでエネルギーが減り、立ち止まると少し落ち着ける仕組みが優しい。前半で拾った強い弾を後半へ持ち込めるのも嬉しくて、うまく繋がった回は小さくガッツポーズした。最後は脱出に追われるのに、終わるとまた出撃したくなる。夏休みの夜に何度も続けてしまう。
出典:NATSU
📘 説明書資料(エアー・フォートレス[HAL-AI])
説明書:Internet Archive 所蔵版(エアー・フォートレス[HAL-AI])
※Air Fortress [HAL-AI](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。












発売日:1987/08/17|価格:5300円|メーカー:HAL研究所|ジャンル:シューティング
NAO: 前半後半に分かれた構成が斬新だった。
NATSU: 出撃後に歩きになるの好きだったなあ。