エピソード
トリビア
1987年8月28日にタカラから発売された光の戦士フォトン 惑星ゾルディアスの戦いは、ジャンル表記こそシューティングでも、最初に突きつけられるのは狙う快感より迷う不安だ。似た壁と似た通路が続く疑似3Dのダンジョンに放り込まれ、敵は飛んだり這ったりで近づき、こちらはレーザーガンで応戦する。ところが撃てば勝てるほど単純ではなく、振り向きと移動の感覚が独特で、目的地が見えないまま時間だけが溶けていく。何切るかより何拾うかという感触が先に立つのは、探索を支える道具が揃うまでが本番だからで、最初の数十分は自分の頭の中の地図づくりに失敗して、操作よりも気持ちが折れやすい。
ゲーム性は、迷路を一歩ずつ進み、必要なアイテムで行動範囲を広げていく探索型のアクションシューティングだ。紹介情報では疑似3Dダンジョンを採用したアクションシューティングとして触れられており、当時のファミコンの中でも変化球の位置にいる。画面は肩越し視点に近い疑似3Dで、左右へ曲がるたびに自分の向きが九十度変わり、同じ景色が連続するせいで方向感覚がすぐ曖昧になる。武器は基本的に一種類で、斜めには撃てないとされ、通路の形に射線が縛られるから、敵を捌くというより落ち着いて角を取るゲームになる。ディスクに書かれたメッセージを読めるようになる装置が手に入ると、ようやく世界が言葉でほどけはじめ、ヒントの断片が次の扉を指す。座標を表示する道具や、隠し扉を感知する道具、指定した座標へ戻れる道具のように、拾うほど迷子の密度が下がっていく設計になっている。扉を抜けるためのカード、縦に上がるための石、最大体力を伸ばすタンクのように、道具がそのまま世界の鍵として並ぶのも分かりやすい。一方でセーブはなく、コンティニューはパスワード頼みなので、少しずつ分かってきたころに電源を切るのが惜しくなる。ドットのテンポが絶妙に惜しいという短評は、敵の接近と画面の切り替わりが噛み合う瞬間がある一方で、音や表示が追いつかず気分が乗り切れない瞬間も多いからだろう。
裏側を覗くと、この作品は国内向けの一本で、海外では発売が確認されていないとされる。一方で英語圏の資料では副題を英語で説明した題名が添えられ、開発元としてアドバンスコミュニケーションが挙げられることもある。別資料では英語名をPHOTONとし、品番やプログラム容量などの仕様も併記される。紹介文では、薄暗い部屋で目覚め、ゾルディアスという言葉だけが残る導入が語られ、雰囲気は宇宙ものの閉塞感を強く押し出す。ファミコンで疑似3Dの迷路を成立させるために、同じ景色が続くことを逆手に取り、情報を小出しにしてプレイヤーの脳内に地図を作らせる発想が見えるのも面白い。だからこそ、光線銃って発想は嫌いじゃないけど、と感じる人ほど、撃つ楽しさより探索の準備運動が長いことに戸惑う。敵を倒して道を切り開くゲームというより、道具を拾って自分の理解を切り開くゲームで、攻略情報の有無が体験を大きく左右するタイプだ。
それでも一度コツが入ると、この不親切さが独特の物語装置に変わる。暗い通路で迷い、見えない扉に何度も跳ね返され、やっと見つけた道具が次の一歩を保証する。迷子の時間が長いほど、脱出が近づいた手触りが強くなるし、短い音の断片も、記憶の中では迷路の匂いとして残る。80年代後半のファミコンには、気軽に遊ばせるより、まず困らせてから覚えさせる作品が確かにあって、光の戦士フォトンはその極端な側にいる。ふわりとした題名に惹かれて手に取った人ほど、ガチな迷路に叩き落とされるが、拾うべきものを拾い、頭の中の地図がつながった瞬間だけは、確かにこのゲームが光って見える。
NAO総評
光線銃という言葉に胸が躍るのに、実際は迷路の段差と操作の癖に気力を削られる。撃ち合いよりも、座標表示や隠し扉感知の道具を拾って自分の理解を更新する作業が主役で、遊び手の忍耐を平然と要求する。セーブなしでパスワード頼みという設計も、短時間で評価を決めさせない方向へ寄せている。八七年の変化球として静かに残った記録でもある。
出典:NAONATSU総評
完成度が惜しいという気持ちは分かるけれど、迷っている時間の長さがそのまま物語になるのがこの作品の優しさでもある。ヒントの断片がつながって一歩前へ出られた瞬間、妙な音や暗い通路まで思い出になる。セーブできないからこそ、その日の探索が丸ごと自分の記憶に刻まれて、翌日にまた地図を頭の中で広げたくなる。題名のふわっとした響きに反して暗い世界が待つ、その意外性が最後までついてくる余韻で、夏休みの夜に似合う。
出典:NATSU
📘 説明書資料(光の戦士フォトン [TFC-PH])
説明書:Internet Archive 所蔵版(光の戦士フォトン [TFC-PH])
※Hikari no Senshi Foton[TFC-PH](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。











発売日:1987/08/28|価格:5500円|メーカー:タカラ|ジャンル:シューティング
NAO: 光線銃って発想は嫌いじゃないけど…。
NATSU: ゲームとしての完成度が惜しい感じだった。