快傑ヤンチャ丸シリーズ
エピソード
トリビア
怪傑ヤンチャ丸を手に取ると、まず迷子になるのは期待の置き場だ。姫救出の筋書きは定番で、忍者が城へ乗り込むと聞けば勢いで押し切る爽快作を想像する。でも1987年10月2日にアイレムから5500円で出た本作は、派手な演出で驚かせるより、横スクロールの足場と敵配置で手を止めさせるタイプのアクションだった。物語も分かりやすく、攫われたくるみ姫を救うために、ヤンチャ丸が妖怪軍団に乗っ取られた風鈴城へ向かう。師匠のもとで修行していたところへ、姫の伝書鳩が傷ついて戻り、巻物に助けて候と書かれていた、という出だしがいかにも時代の味だ。和風の見た目は確かに個性になるのに、遊び始めは地味に感じやすい。だからNAOの言うように、定番を和風で味付けして何とか個性を出した佳作、という位置に落ち着きやすい。けれど、その佳作感こそがこの作品の入口で、肩の力が抜けた瞬間に面白さが見えてくる。
システムはシンプルで、ヤンチャ丸は刀を回して前方を切り払い、ジャンプで穴や敵を越えて進む。武器は回転剣という見た目の分かりやすさがあり、触れたら終わりの敵も多いから、いかに自分の前を安全に保つかが基本になる。ここで地味に効いてくるのが、敵やボスの癖がはっきりしていることだ。敵は妙に顔が濃く、たとえばおたふく面のボスが頭突きや息で吹き飛ばしてきたり、山奥の断崖に棲む相手が斬られると小さく分裂したりと、見た目の冗談みたいな造形が、そのまま立ち回りの注意点になる。さらにボス戦では、攻撃を当てると刀が吹き飛んで拾い直しになる場面があるとされ、攻め続けるより、落ち着いて取り戻す判断が必要になる。強化の小ネタも効いていて、鐘のアイテムで遠距離攻撃になったり、身を守る効果が得られたりして、一本調子になりがちな道中に呼吸が入る。2人で交代しながら遊べる点も、家庭用らしい救いになる。難しすぎず遊びやすいと感じるNATSUの手応えは、こういう手堅い反復から来る。
裏側の情報で答え合わせになるのは、これはもともと1986年のアーケード作品で、海外では別名で売られたという事実だ。英語圏ではKid Nikiとして出され、販売の枠組みも日本と異なる。見た目の差として髪型が変わるなど、翻訳以上の作り替えがあったとも説明されている。つまり和風の味付けは国内向けの顔であり、同じ骨格でも市場ごとに姿を変えて生き残ってきたシリーズの一作でもある。後年の扱いも興味深い。七つの区切りを抜けるごとにボスが待ち、姫を救ったあとも追撃の最終局面が用意されているという構成は、短い遊びを積み重ねる家庭用に合っていた。また、別のアイレム作品キックルキューブで、特定の操作を続けるとタイトル画面にヤンチャ丸が顔を出す隠し演出が語られていて、シリーズの存在感が社内の遊び心として横断していたのも面白い。日本のファミコン版は3DS向けの別タイトルに収録された例があり、アーケード版は2018年に現行機へ配信された。一本の佳作が残り方を変えながら延命している。
まとめると、怪傑ヤンチャ丸は、定番の姫救出を借りながら、和風の景色と堅実な操作感で自分の席を作ったアクションだ。初見は地味に思えても、回転剣の気持ちよさと、ほどよい難度の積み重ねで、気付けば最後まで連れていかれる。派手な記憶ではなく、繰り返すほど手に馴染む記憶として残る。そういう一本がシリーズ化されていくのは、当時のファミコンの現実にいちばん近い成功の形だったのかもしれない。
NAO総評
姫救出の定番筋でも、和風の味付けで何とか個性を出した佳作、という評価は腑に落ちる。回転剣は分かりやすく、ベル系の強化で一気に楽になる一方、足場と敵の配置は意地が悪く、油断するとあっさり転ぶ。派手さでは同時代の大作に負けるのに、遊びの手堅さで最後まで走らせるのがコナミでも任天堂でもない当時のアイレムらしさだ。海外で別名にされ、見た目まで変えて売られた事実も、無難さを越える工夫と商売の現実を感じさせる。
出典:NAONATSU総評
難しすぎず遊びやすい設計で、何度も挑んで最後までやり込めた、という感覚がこの作品の良さだと思う。刀を回して道を切り開く手応えが気持ちよく、ベルを拾えた時の安心感もあるから、少しずつ上達が見える。2人で交代しながら遊べるのも嬉しくて、失敗しても次の番で取り返したくなる。敵の顔やボスの癖がはっきりしていて、次はこうしようと反省しやすいのも好き。大げさな物語より、姫を助けに行く単純さが、疲れた日にちょうどよくて、遊び終わると昔の縁側みたいな余韻が残る。
出典:NATSU
📘 説明書資料(怪傑ヤンチャ丸 [IF-07])
説明書:レトロゲームの説明書保管庫(怪傑ヤンチャ丸 [IF-07])
※Kaiketu yancha-maru[IF-07](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※レトロゲームの説明書保管庫様による保存資料です。 / 権利は各社に帰属します。















発売日:1987/10/02|価格:5500円|メーカー:アイレム|ジャンル:アクション
NAO: 姫救出の筋書きは定番、和風の味付けで何とか個性を出した佳作。
NATSU: 難しすぎず遊びやすい設計で、何度も挑んで最後までやり込めた。