エピソード
トリビア
1987年12月4日にパックインビデオから発売されたランボーは、映画ランボー怒りの脱出を題材にしたファミコン用アクションだ。横から見たスクロールが基本で、見た目は軽快なのに一歩の重さがある。箱やタイトルが放つ無敵の雰囲気に反して、遊び始めの体感は妙に心細い。最初は軍刑務所にいる設定で、トラウトマン大佐に任務に行くかと問われても断っては先へ進めない。基地で命令を受け、連絡役のコーと合流し、輸送されて森へ落ちる。本来は収容所を撮影して帰るだけのはずが、画面はすぐに戦いと救出へ背中を押してくる。そこからは小さな敵や段差に削られ、草むらの気配に触れただけで力尽きたように見える瞬間もある。映画の豪快さを期待していた手が、いきなり慎重な足取りに矯正される。その噛み合わなさがつまずきの正体で、だからこそ画面の先へ進みたくなる。基地から密林、洞窟、収容所へと舞台が切り替わり、写真を撮れと言われた任務が、救出したい衝動に負けていく流れまで、ゲームは淡々と始めて淡々と追い込む。
この作品の迷子感は、一本道の物語と、迷路のような移動の組み合わせから生まれる。画面端を越えて東西へ抜け、地面に刻まれた南北の地点を見つけると上下へ移れるが、行き先が一目で分からない。地面に印のある地点を探して上下へ抜ける感覚は、地図が頭に入るまでずっと手探りだ。東西の抜け道も画面端の違和感として隠れ、探すほど自分の迷子の癖が記録になっていく。上下の抜け道を使うと景色が変わり、どこへ出たのか把握しづらい。次へ進むには任務用のアイテムが必要で、見落とすと同じ地帯を何度も往復することになる。たまに出会う人物に話しかけると、助言だけでなくパスワードが手に入り、ここでようやく救いの手触りが出てくる。戦いも優しくない。序盤はナイフが頼りで、投げナイフや弓矢、爆発矢、銃、手榴弾と武器が増えても弾数は限られ、倒した敵から補給する運用が前提になる。ナイフ以外の武器は弾が尽きると切り札にならず、使う順番と節約そのものが判断になる。体力を戻す小瓶もあるが、安心できるほど潤沢ではない。舞台はベトナムで、ジャングルから収容所へ向かう任務が筋書きとして走っている。森や沼地や洞窟では蜂や蛇や魚などが容赦なく襲い、後半は色の違う服の兵士が蹴りや銃撃で押し返してくる。日本版は怒りを示す表示があり、実際には経験値と戦闘レベルの仕組みとして働く。レベルが上がるほど殴り合いが成立し始めるが、そこへ辿り着くまでが修行だ。一晩で上達するタイプの難しさではない。パターンを覚える前に身体が先に折れる、という感覚がこのゲームの色になっている。
裏側を覗くと、作り手の方向性は意外に多層だ。海外ではアクレイムが発売を担い、日本のパックインビデオが開発と発売を行った。北米では1988年5月に発売され、映画題材の名前が売り場に届く力を示した例として語られたこともある。クレジットにはデザイナーの時田章宏、シナリオの成田美沙、作曲の長谷部徹と本山みんきの名が残り、制作陣の中にはオクちゃんやいーとぉまきまき やまちゃんのような呼び名も記されている。会話でパスワードを得て進行を保つ仕組みや、経験値で戦い方が変わる要素は、単なる走って撃つだけの映画ゲームから少し離れた位置に置かれている。同じ題材でも他機種では別の遊びになっている例があり、この一本が選んだのは、迷いながら強くなる探索寄りの形だった。
印象に残るのは、映画らしさよりゲームらしさが勝つ瞬間だ。基地の命令は敵と交戦するな、捕虜を助けるな、という冷たい線引きなのに、プレイヤーは画面の都合で戦い、助ける方向へ追い立てられる。巨大な蜘蛛やヘリコプターのようなボスは、物語の必然よりもゲームの見せ場を優先した存在で、それがかえってこの作品の異様な味になる。極めつけは終盤の演出で、基地へ戻った後に怒の文字を投げつけるという、理屈より感情で締める結末が用意されている。唐突さが妙に忘れがたい。無敵の英雄が蚊に刺されたように倒れる理不尽さも、草むらで散るような間抜けさも、最後に怒りだけが残る。迷子になって、何度も倒れて、それでも一画面先へ進みたくなる。そんな時代の遊び方がこの一本に濃く詰まっている。
NAO総評
映画の無敵感を借りておいて、序盤は草むらと段差で簡単に散る。その理不尽さは雑というより、探索と成長を強制する設計の強さだ。怒り表示で経験値を隠し、武器と弾の管理で歩幅を狭める。パスワードの救済すら会話待ちで、親切さは自分で掘り当てるしかない。アクレイムが海外で担いだ版権の看板と、この不親切な中身の落差が、八十年代の商売と遊びの距離感まで透けて見える。制作陣の名はきちんと残るのに、情け容赦は残らない。
出典:NAONATSU総評
無敵の英雄なのに、蜂や蛇に触れただけで蚊に刺されたように倒れてしまうみたいで、毎回泣きながらやり直した。南北の抜け道を探して同じ森をぐるぐる回り、どこにも行けない夜ほど悔しかった。けれど話しかけてパスワードをもらえた時や、レベルが上がって一歩だけ前へ出られた時は本当に嬉しい。最後に怒の文字を投げる場面だけは、理屈抜きで気持ちが晴れて、ああ遊び切ったんだと思えた。あの苦さも含めて、冬の夜の記憶になっている。
出典:NATSU
📘 説明書資料(ランボー [PAC-RV])
説明書:Internet Archive 所蔵版(ランボー [PAC-RV])
※Rambo [PAC-RV](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。












発売日:1987/12/04|価格:5300円|メーカー:パック・イン・ビデオ|ジャンル:アクション
NAO: ゲリラの王者が雑草で散るとは誰が予想したか
NATSU: 無敵の英雄が蚊に刺されたように死ぬ悲しみ