エピソード
トリビア
キャッスルエクセレントは1986年11月28日にアスキーからファミリーコンピュータ向けに発売された城探索型の作品で、舞台はグロッケン城の百の部屋、さらわれたマルガリータ姫を探し出すために王子ラファエルを動かして進む。部屋ごとに色つきの扉があり、開けるには同じ色の鍵が必要で、鍵は赤、青、水色、ピンク、緑、黄色の六色だけで一つも無駄がないと語られる。つまり派手な演出よりも、鍵をどこで使うか、どの順で部屋を通るか、そこにある罠と敵をどう抜けるかが主役になる。王子の命は点数で増え、マップを取ると現在地が表示されるようになるが、結局はノートに部屋の形を書き留めていく遊び方が前提で、迷うことそのものがゲームの呼吸になっている。酸素ボンベを取ると曲が変わり、その間だけ水中に入れる仕掛けまで用意されていて、可愛い顔をしながら要求はかなり硬派だ。
ゲーム中に特徴的なのが、コントローラー2から呼び出すサブコマンドの存在だ。ここにはバックやセーブなどが並び、詰んだ時に命を一つ払って一つ前の部屋へ戻るなど、間違いを命で買い戻す設計になっている。鍵が余らない構造だからこそ、戻る手段を犠牲つきで用意しておくのが理にかなっていて、難しさの鋭さを保ったまま遊び直しの余地を残している。さらにセーブは万能な救済ではなく、ペナルティとして命が減り、難しそうな場面でセーブして失敗したらロードという使い方を封じる思想がはっきりしている。敵も剣で倒せる相手だけではなく、剣では倒れない司教のような存在を押しつぶして対処する発想が出てきて、迷路の記憶だけでなく手順と操作の精度が最後まで試される。
背景にはパソコン時代の長い系譜がある。キャッスルエクセレントはザキャッスルの続編として語られ、百部屋を一つずつ解く骨格はそのままに、迷路全体をさらに複雑なパズルとして組み上げた挑戦作として位置づけられてきた。広告には初出機種の発売日が入ったものと、新発売の文言に差し替えたものがあったとされ、展開の広さを前提にした売り方が見える。マニュアルにアスキーからの挑戦という言葉があると紹介されているのも象徴的で、難しさそのものを価値として掲げていた。雑誌月刊LOGiNのレビュー欄で一週間で十六部屋しか進めなかったという話が引かれるほどで、当時のプレイヤーが消耗しながら攻略していた空気が残っている。海外ではCastlequestの名で1989年9月に米国発売され、発売元がNEXOFTになるなど、同じ迷路が別の看板で流通していく動きもあった。
トリビアとして面白いのは、親切と不親切を同じ画面に同居させている点だ。妖精を助ければ味方になるかもしれないというおとぎ話の約束があり、愛の鍵という言葉まで出てくるのに、現実の城は針やリフトや挟み込みなどの即死級が平然と並ぶ。鍵の浪費は取り返しがつかない一方で、バックやセーブには命の支払いが付くから、やり直しはできるが楽はさせないという取引が常に見え隠れする。だからこそ、手書きの地図が増えていく達成感と、失敗の理由が鍵の色や一手の遅れとして具体的に残る感触が強く、いきなり難所にぶつかっても妙に記憶に残る。百の部屋は単なる量ではなく、昔のゲームが持っていた時間の厚みであり、ひとつ越えた時にだけ静かに次の部屋へ進める。
NAO総評
アクションの皮をかぶった、究極の「資源管理パズル」。鍵の一本、命の一つの使い道で、百部屋の迷宮が天国にも地獄にも変わる。2コンを使って命を支払い、過去を買い戻す(バックする)なんて、今の親切なゲームじゃ考えられない重い取引だよな。 でも、その厳しさの裏にはアスキーの計算し尽くされたロジックがある。司教をブロックで潰し、水中をボンベで潜り、手書きの地図で一歩ずつ城を解体していく快感は、まさに「大人の知恵比べ」だ。3900円でこの密度、当時のPCユーザーが熱狂したのも頷ける。不親切に見えて、実はプレイヤーの知性を一番信じていた時代の名作だぜ。
出典:NAONATSU総評
お城の中に閉じ込められて、鍵の色に一喜一憂する……見た目は可愛らしい冒険物語なのに、中身は胃が痛くなるような詰め将棋みたい。命を捧げてセーブするなんて、当時の私には怖くてたまらなかったけれど、一歩間違えたら終わりっていう緊張感が、グロッケン城の冷たい壁の匂いをリアルに感じさせてくれたの。 ノートに丸や四角を描いて、自分だけの地図を作っていく時間は、ゲーム画面を見ていない時でもずっと「攻略」が続いているみたいで。司教を倒す時の「潰す」という発想の転換も、解けた瞬間の鳥肌がすごかったわ。不器用なジャンプじゃ越えられない難所を、知恵と記憶で乗り越えていく。あの達成感は、確かに「エクセレント」な体験だったわね。
出典:NATSU
📘 説明書資料(キャッスルエクセレント[HSP-05] )
説明書:Internet Archive 所蔵版(キャッスルエクセレント[HSP-05] )
※Castle Excellent [HSP-05](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 権利は各社に帰属します












発売日:1986/11/28|価格:4900円|メーカー:アスキー|ジャンル:アクション
NAO: 謎解きとマッピングが融合したような不思議な感覚の城探索ゲーム。
NATSU: 理不尽さの向こうにある達成感。これは修行と呼ぶべきか、試練か。