エピソード
トリビア
1987年4月24日にナムコから発売されたファミリージョッキーは、ファミコンでは初の競馬ゲームとして登場した一本だ。ジャンルはスポーツとされるが、見た目はほのぼの、手触りは意外と硬派で、勝てるかどうかは腕と育成の両方にかかっている。ファミリースタジアムから始まったファミリーシリーズの流れに連なり、家でわいわい遊ぶ入口を作りつつ、競馬の言葉や雰囲気を軽やかに借りている。価格は3900円で、当時のナムコ作品らしく遊びの密度で勝負する姿勢が見える。
操作はシンプルで、十字キーで位置取りをし、Aで加速し、Bでジャンプする。ところがAは鞭入れ扱いで、押すたびに残りスタミナを削り、Bも障害を失敗するとスタミナが大きく減る。画面下にタイムや順位と並んで残りスタミナゲージが常に出ていて、足りなくなれば加速できず、じわじわと置いていかれる。速度表示は現実よりかなり速い値が出るが、その誇張がゲームとしての勢いを作っていて、短い時間で勝負が決まる緊張を保っている。レースは全て6頭立てで進み、4着以内に入れば次へ進めるが、賞金総額に応じたグレード制があるため、高みを目指すなら賞金の出る3着以内を積み重ねたい。新馬戦から始まり、条件戦を勝ち上がっていく形でレースが並び、重賞や大きなタイトルへ進むには前段階の勝利が条件になる。最終盤の天皇賞に挑むには、複数の大レースを勝ち抜いて資格を得る必要があり、途中で一度でも流れを崩すと立て直しがきつい。
面白いのは育成がメニューではなくコース上で起きる点で、コーナー間の縦スクロール区間にパネル状のマークが出現する。スピードやスタミナやジャンプなどの能力上限を上げるものと、走行中のスタミナを増減させるものが混ざり、位置取り次第で拾える数が大きく変わる。しかも出現位置や種類はランダムなので、決め打ちの最短ルートではなく、毎回その場で取捨選択する判断が求められる。さらにマーク出現地帯ではBを押してもジャンプできないため、障害を飛び越える気持ちよさと、育成の取り合いが同じボタンに乗っているようなクセが残る。コースには芝とダートがあり、さらに馬ごとに得意不得意があるので、同じ腕前でも選んだ馬で体感が変わる。内側の路面が荒れている区間もあり、距離は得でも速度とスタミナに損が出る。短期の勝利と長期の育成のどちらを優先するかが、いつも目の前で揺れる。
障害競走が作品の看板で、ハードルのような小さな障害と、大障害と呼ばれる大きな障害が用意され、失敗時の消耗の差で怖さが変わる。しかも現実のような降着は採用されていないため、他馬にぶつけても順位が戻されない。正面から押し合いへ持ち込む荒っぽい勝ち方すら成立し、ここが純粋なシミュレーションよりもゲームらしい痛快さを作っている。実在馬を思わせるもじりの馬名や、現実のビッグレース名を借りたレース構成も相まって、競馬の空気を借りつつ笑いに変える作りだ。音楽は小沢純子が担当し、草競馬の旋律を使った曲が繰り返し鳴って、ゆるい顔で意外とシビアな世界を支えている。遊び方としては一人用だけでなく二人同時プレイもあり、同じ画面でぶつかり合うと自然に駆け引きが生まれる。さらにレースだけを楽しむモードに加え、予想と賭けを中心にしたファミリーゲームも搭載され、持ち金を増やしていく遊びが用意されているが、当時の評価ではそのファミリーゲームだけを単独で遊べない点が惜しまれもした。その後はゲームボーイ版で賭けの要素が外され、別機種では題名を変えて展開し、携帯向け配信や復刻コレクション収録も経て、形を変えながら残っていく。ナムコはバンダイとの統合を経てバンダイナムコとして権利を受け継ぎ、遊び場を現代にもつないだ。競馬ゲームがまだ定番になりきっていない時代に、直感操作と育成とギャンブルの空気を一つに束ねた、この妙なバランスこそがファミリージョッキーの記憶の芯になっている。
NAO総評
ジャンプの感覚がシビアで、馬も自分も試される。押しどころを外すとスタミナが削れて、次の直線まで罰が残るのが容赦ない。位置取りも強引に行けるが、その分だけ消耗が透けて見える。ほのぼのした見た目に油断すると、四着以内のラインであっさり現実を突きつけられる。競馬の皮をかぶった反射神経テストではなく、欲と判断の配分を読む小さな戦略ゲームとして眺めると、妙に筋が通っている。3900円でここまで意地悪に作るのが、当時のナムコの怖さでもある。
出典:NAONATSU総評
家族でやるには過酷な障害戦で、負けると本当にケンカになりそうな熱さがある。だからこそ、跳べた瞬間のほっとする感じや、最後の直線で抜けたときの胸の高鳴りが忘れにくい。友だちと同じ画面でぶつかり合って、笑いながらも悔しくて、また一本だけと握り直す。地味に見える時間も、スタミナの残りを見守るあの沈黙があってこそで、春の夜の居間の空気まで思い出す。勝てない日はレースを眺めて予想で盛り上がると、同じソフトの中に別の居場所があるのが救いになる。草競馬の曲が流れるだけで、あの頃の気分に戻れる。
出典:NATSU
📘 説明書資料(ファミリージョッキー [NAM-FJ])
説明書:Internet Archive 所蔵版(ファミリージョッキー [NAM-FJ])
※Family Jockey [NAM-FJ](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します












発売日:1987/04/24|価格:3900円|メーカー:ナムコ|ジャンル:スポーツ
NAO: ジャンプの感覚がシビアで、馬も自分も試される。
NATSU: 家族でやるには過酷な障害戦。負ければケンカ勃発。