エピソード
トリビア
1987年9月3日にカルチャーブレーンから発売されたシェラザード アラビアンドリームは、RPGとして手に取ると最初に迷子になる作品だ。砂漠の町に出ても次に何をすればいいのかが丁寧には語られず、歩いているだけで場面が切り替わって別の戦いが始まる。武器も魔法もあるのに、序盤は自分の手札が見えにくく、店で買うべき物すら分からない。だからこそ、ごちゃごちゃしてたけど夢はあった、という感想が先に立つ。それでも仲間や姫に辿り着いた瞬間だけ、霧が晴れる。ここで初めて、このゲームが一本道ではなく、時間と場所を行き来しながら世界を一枚ずつ完成させる旅だと分かる。
仕組みは、固定画面のアクションで進む時間が長く、スタートで止めた画面でAボタンとBボタンへ行動を割り当てて探索する。話す、剣、杖などを付け替える作業自体がこの作品の癖で、最初のつまずきにもなる。全5ワールドで仲間と姫を探し、パレスのボスを倒して次へ進む流れだが、その途中で過去や未来の異世界へ渡る必要があり、導線を掴めないと同じ景色をさまよう。さらに場面切り替えをきっかけに魔法合戦と呼ばれるRPG風の戦闘へ入ることがあり、アクションの手触りと別のテンポが割り込む。ボス戦はアクション側で行われるため、気持ちがRPG寄りになったところで急に身体能力を求められるのも落とし穴だ。敵を倒してルピアを集める流れが濃く、所持金が増えていくほど冒険より家計簿を付けている気分にもなる。強敵の魔法使いは結界で逃げ道を塞ぎ、弾で姿を変えさせてくるなど厳しいが、倒せれば見返りも大きい。残機制で、力尽きたり水に落ちたりすると一つ減り、パスワードはゲームオーバー時に表示されるため区切りが付けにくい。経験値がたまってもレベルアップは各ワールドの姫を見つけた時だけなので、稼いだのに強くならない違和感も起きやすい。救いは称号で、戦士、聖者、魔法使いをモスクで切り替えられ、詰まった場所で別の勝ち筋を探せる。
裏側を知ると、この欲張りさが狙いだったことが見えてくる。日本ではカルチャーブレーン初のアクションRPGとして位置付けられ、舞台をアラビアにするという当時としては異色の選択がされた。続編企画もあり、米国では別題も付いたが最終的に中止になったと記録されている。北米版はThe Magic of Scheherazadeとして発売され、ローカライズでキャラクターやモンスターの見た目、マップ表現、テキスト表示、追加曲などに手が入った。作曲には沢彰記とみかめしゅんいちが関わり、制作ではシンセ演奏をカセットへ録ってからファミコンの音源へ落とし込む工程が語られている。攻略本の刊行や漫画展開も触れられており、分からなさを周辺メディアで補いながら遊ぶ時代の空気が残る。近年はサウンドトラックが発売され、海外版の楽曲も収録された。迷子のままでも前へ進ませる力は、物語の結末より先に、この仕組みの過剰さが生んだものだった。
NAO総評
RPGの顔をした迷路遊びで、まず迷子になる。でも仕組みを飲み込むと、稼ぎと探索と時間旅行が噛み合って、一本の冒険譚に変わる。見た目は童話、触ると管理が厳しい。ごちゃごちゃしてたけど夢はあったなあ、という短評がそのまま核心だ。遊びの説明をこちらに押し付ける強気さも、攻略本と口コミで回った八十年代の空気と一緒に残る。理不尽とロマンを同じ箱に詰めた設計思想が面白い。結果として、プレイヤー側の記憶に長く居座るタイプの作品になった。
出典:NAONATSU総評
説明書を読んでもなお分からなくて、地図を作りながらため息をつく。戦闘のテンポや切り替えに戸惑って、好きなのに止まりたくなる瞬間がある。独特のしくみが頭に入った日から、街の声や音楽が急に味方になる感じがして、また電源を入れてしまう。説明書を読んでもわかんなかったけど好きだった、という短評は嘘じゃない。分からなさを抱えたまま進むのが、この作品の優しい癖だった。最後に絨毯で飛び立つ余韻が、少しだけ救いになる。
出典:NATSU
📘 説明書資料(シェラザード [CBF-AS])
説明書:Internet Archive 所蔵版(シェラザード [CBF-AS])
※Arabian Dream Scheherazade [CBF-AS](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。












発売日:1987/09/03|価格:5500円|メーカー:カルチャーブレーン|ジャンル:RPG
NAO: ごちゃごちゃしてたけど夢はあったなあ。
NATSU: 説明書読んでもわかんなかったけど好きだった。