エピソード
トリビア
鉄道王は1987年12月12日にデービーソフトからファミコンへ出たボード作品で、価格は4900円だ。題名から鉄道経営の本格派を想像して始めると、まず迷子になる。地図を眺めて路線計画を立てるより先に、ルーレットの目で進んで目的地へ向かう、いわゆるボードゲームの王道手触りが前に出るからだ。ところが一周もしないうちに、軽いすごろくでは終わらないと気づく。目的地に着けば金が入る。線路や駅に手を伸ばせば資産が増える。盤面のどこを押さえたかで、見える景色そのものが変わっていく。金と土地を制す者だけが見える景色がある、という短評は誇張ではなく、このゲームの温度をそのまま言い当てている。勝ち筋が見え始めた瞬間から、会話の声量が落ちるタイプの楽しさがある。
遊びの中心は、ルーレットで進み、目的地到着で資産を増やし、鉄道の買収で稼ぐことだ。後年の桃太郎電鉄に近い形と言われる一方で、こちらは物件より鉄道買収が主役として語られる。さらにモノポリーのように通過した場所を押さえる発想も混ざるが、決定的に違うのは、買った線路を相手が通る義務がないことだ。せっかく押さえた路線が、平気で迂回される。これが序盤のつまずきになる。買ったのに儲からない。読んだはずなのに外れる。だから次はもっと確実に、みんなが通りやすい場所や短絡のルートへ手が伸びていく。勝負が熱くなるほど、相手の進路そのものを邪魔したくなって、家族で遊ぶと真顔になりやすい。親と路線を奪い合って気まずくなった夜、という短評が生々しいのは、勝ち負けの感情が盤面の上でそのまま可視化されるからだ。しかも順番の早い側が売買で先に動ける場面があり、一部のミニゲームは後手ほど選択肢が減ると言われる。強い側がさらに強くなる感覚が、静かに積み上がっていく。
そしてこの作品を忘れにくくしている裏側の答え合わせが、財産交換イベントの存在だ。自分の資産が入れ替わる可能性があり、上手く狙われると一発で景色が逆転する。積み上げが崩れた側は黙り、崩した側も笑い切れない。その残酷さがあるのに、なぜか次の周回でまた狙ってしまう。遊ぶほどに人間の欲と恨みつらみが出て、出たぶんだけ面白くなる。舞台の小ネタも効いていて、盤面の都市名がひらがな表記で、ろんどんやぱりのように並ぶ。現実の地理を知っているほど、読めるのに距離感が掴みにくく、頭の中で地図がぐにゃりと曲がる感じがする。見た目は素朴でも、感情は濃い。デービーソフトは北海道札幌の会社として知られ、後年にはアトラスからプレイステーションで続編が出て、さらに携帯電話向けの派生も展開された。居間のテーブルから始まった路線争奪が、形を変えながら長く残ったという事実が、この一本の妙な引力を裏から支えている。結局、鉄道王の強さは鉄道のロマンより、金と土地が人を真顔にする瞬間を、ゲームとして成立させてしまったところにある。
NAO総評
最初はすごろくの皮を被っているのに、数周で資産の論理がむき出しになる。金と土地を制す者だけが見える景色がある、という短評がまさに核心で、勝っている側ほど盤面の情報が立体に見え始めるのが怖い。買った線路を迂回される仕様が所有の快感を削り、疑心暗鬼だけを濃くする。さらに財産交換が積み上げを壊すことで、努力と運の比率が一気に歪む。家族で遊ぶほど、笑いと気まずさが同じターンで来るのが皮肉だ。
出典:NAONATSU総評
親と真顔で路線を奪い合って気まずくなった夜、あれがこのゲームの一番の記憶かもしれない。勝ちたい気持ちが出た瞬間に、会話が減って、サイコロじゃなくルーレットの音だけが部屋に残る。しかも追い打ちみたいに財産が入れ替わる出来事が来て、泣きそうなのに笑うしかなくなる。それでも次の日にはまた遊びたくなるのが不思議で、ひらがなの都市名を追いかけて迷子になりながら、家族の時間だけは増えていった。
出典:NATSU
📘 説明書資料(鉄道王 [dBF-RW])
説明書:Internet Archive 所蔵版(鉄道王 [dBF-RW])
※Tetsudou Ou - Famicom Boardgame [dBF-RW](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。












発売日:1987/12/12|価格:4900円|メーカー:デービーソフト|ジャンル:ボード
NAO: 金と土地を制す者だけが見える景色があるゲーム
NATSU:親と真顔で路線奪い合って気まずくなった夜あった