エピソード
トリビア
1987年3月14日に東宝から発売されたファミリーコンピュータ用ソフトで、価格は4900円、題材はあだち充の漫画タッチだが、青春野球の筋をなぞる作品ではない。アニメ放送が終盤に差し掛かる時期に出た関連作品の一つで、上杉達也と上杉和也、そして浅倉南が、飼い犬パンチを追って異次元に吸い込まれ、迷路のような街を歩き回りながらパンチの子犬を十匹探すという導入からして、原作の空気を知っているほど面食らう。野球はせいぜいボールを投げるくらいで、画面の中心にあるのは異世界探索と敵との殴り合いだ。タイトルに抱く期待と内容の距離が大きいほど、驚きは批判にも笑い話にも変わり、この一本の語られ方を決定づけてきた。
英語版の概要でもビデオゲーム項目に挙げられ、ジャンルはアクション、開発はコンパイル、発売は東宝と整理されている。MobyGamesでもライセンス作品として登録され、横視点の二次元スクロールで、殴り合い型のアクションとして説明され、1人から2人で遊べる作品として扱われている。プレイヤーは双子を軸に街を探索し、通りや建物を出入りしながら情報とアイテムを集め、子犬を監禁しているボスに備える。一人プレイでは双子を切り替えて進められるとされ、二人分の持ち物をどう回すかが探索の手際になる。敵は街中を徘徊し、攻撃はパンチに加えてボール投げもでき、倒すほどエネルギーが増える。しかもそのエネルギーは通貨でもあり、店で道具を買い、いらない物は店で捨て、必要品だけを握り直してボスへ向かう。子犬はボスモンスターに囚われており、必要な道具を揃えないと突破できないとされる。店そのものを見つけることも探索の目的になり、迷路の街を歩く時間を長くしている。持てる数は多くないため、何を持って何を捨てるかが段取りを左右し、焦りがそのまま迷子に変わる。
三人で異世界へ向かう設定は物語上のにぎやかさを用意する一方で、日本語版の解説では南の攻撃力がゼロとされ、戦力にならない存在を連れ回す負担が難度の一部として立ち上がる。無駄に多くて強い敵を相手に広いフィールドを歩き回る内容だと書かれ、当時のキャラゲーとしても手加減のない設計だったことがうかがえる。ここで効いてくるのがパスワードで、日本語版ではゲームをほぼクリア同然の状態から始められるパスワードが紹介されたが、原作とファンを侮辱したような下品な内容だったという逸話が挙げられている。ところが同じ箇所で、ソフトの判定が緩く、解析の結果として特定の文字列を一文字ずつ検査する処理をしていないことが示され、かなりでたらめな文字列でも通ってしまうと説明される。結果として、単語として意味を持つパスワードが広まったとしても、それが最初から用意された仕掛けだったとは言い切れないという、身もふたもない結論に落ち着く。
この騒動から作者が激怒して以降タッチのゲーム化が二度とできなくなったという都市伝説も語られるが、日本語版ではその後も別のあだち作品のゲームが発売されているため事実に反すると明記されている。都市伝説が否定されても、原作とゲームの距離の大きさが招いた違和感そのものは消えない。だからこそ本作は、原作再現の成功例としてというより、企画が大きく跳ねた時代の名残として、今なお語り草になっている。シティを歩く探索と殴り合いを同居させた作りは、派手な演出よりも移動と判断の繰り返しが残り、プレイ体験が淡々としているほど、逆に周辺の逸話が肥大化しやすい。作品の印象がゲームそのものだけで完結せず、当時の紹介記事や噂話を含めて一つの像になる点も、キャラゲー史の面白いところだ。それが今でも検索され続ける理由になる。タッチと聞いて手を伸ばした人ほど、野球の代わりに待っているのが異界の街歩きと物資管理だと知った瞬間の落差が強い。それでも、子犬を一匹ずつ連れ戻す目的は分かりやすく、迷路のような街に慣れていくほど、自分の行動が地図に刻まれていく感覚が残る。今だからこそ、なおさら妙に目が離せない。味がある。青春の看板と異世界の手触りが同じカセットに同居していること自体が、1987年という年のゲーム文化の面白さを映している。
NAO総評
タッチを名乗りながら、野球は投げるだけで、異次元の街を物資管理しつつ殴り歩く。副題のミステリーより先に、こちらの期待が迷子になるのが笑いどころだ。南が戦力ゼロという設計まで含め、原作付きの看板を最短距離で裏切る。しかもパスワード騒動の話題が本編を追い越し、作品像が周辺逸話で補強されていく。キャラを借りて別の遊びを成立させようとした時代の強引さとして、惜しいのに忘れにくい。原作ファンほど刺さるのは皮肉だ。
出典:NAONATSU総評
あだち作品だと思って始めると、いきなり異次元で子犬探しでびっくりする。野球の代わりに、街を歩いて店を探し、エネルギーをやりくりして道具を揃える時間が続く。南が戦えない設定もあって心細いのに、双子を切り替えながら地図を体で覚えると、不安が少しずつ冒険の手触りになる。原作の甘酸っぱさを求めると戸惑うけど、当時のキャラゲーらしい強引さが逆に愛おしい。いい意味でも悪い意味でも、ふとした瞬間に思い出してしまう。
出典:NATSU
📘 説明書資料(タッチ ミステリー・オブ・トライアングル[THF-TU])
説明書:レトロゲームの説明書保管庫(タッチ ミステリー・オブ・トライアングル[THF-TU])
※City Adventure Touch: Mystery of Triangle[THF-TU](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※レトロゲームの説明書保管庫様による保存資料です / 権利は各社に帰属します












発売日:1987/03/14|価格:4900円|メーカー:東宝|ジャンル:アドベンチャー
NAO: タッチと名はつくが野球要素はほぼなし。まさかのSF推理劇。
NATSU: あだち作品と聞いて手を出すと驚く。いい意味でも悪い意味でも。