ツインビー

ツインビーシリーズ
エピソード
トリビア
1986年1月4日、コナミから発売されたファミリーコンピュータ版『ツインビー』は、1985年のアーケード同名タイトルをベースとした縦スクロールシューティングである。開発はコナミ自社チームによる移植で、価格は4900円。シリアスな戦闘機ではなく、丸みを帯びたロボット風の機体を主人公とする“かわいい系シューティング(キュートエムアップ)”の先駆けとして知られる。プレイヤーは1P側がツインビー、2P側がウインビーを操り、空中ショットと対地ボムを使い分けながら、雲間に潜む敵や地上砲台を撃破して進む。2人同時プレイ時には協力・合体攻撃も可能で、シンプルながら連携の妙も楽しめる設計だった。
ゲームの最大の特徴は“ベルシステム”である。雲を撃つと黄色い鈴が出現し、これを撃ち続けると色が変化する。白のツインショット、青のスピードアップ、緑の分身(オプション)、赤のバリアといった効果があり、色変化は一定弾数で循環する仕組み。1発多く撃てば再び黄に戻ってしまうため、まさに「鈴のタイミングで生死が決まる」。欲を出して撃ちすぎれば強化を逃し、躊躇すれば敵弾に追われる。この絶妙な駆け引きがゲームの根幹を支えていた。また、赤と緑の強化は排他仕様で、バリアか分身かという選択も戦略上の要。プレイヤーは一瞬の判断で攻撃・防御・速度のバランスを取ることを迫られる。
さらに特筆すべきは“腕”システムだ。ツインビーの両側にはアームがあり、地上への爆弾投下に用いられる。敵弾を受けて片腕を失うと片方の対地攻撃が不可能になり、両腕を失うと完全に対地戦が封じられる。まれに“救急車”が登場して修理してくれるが、1回限り。可愛い見た目に反して、被弾の重みは意外なほど深刻である。雲の上を漂う白い世界は一見のどかだが、ベルを撃ち損ねればリスクが生まれ、腕を失えば地上処理が滞る。ミスが重なると、まるで平和な空が一転して地獄のように感じられる瞬間がある。NATSUの短評「雲の中に癒しはなかった。」は、まさにその体感を言い当てている。
ファミコン版はアーケードに比べると表示数や処理速度に制限があり、敵弾やアイテムが多い場面では処理落ちが起きやすかった。しかしその“間”が、逆にベルの撃ち分けに余裕を生み、家庭用ならではのテンポをつくり出している。2人プレイでは画面のどちらがベルを取るかを巡って衝突することも多く、協力と競争が混ざった独特の空気感を生んだ。ステージ構成は全5面で、最終面のボスを撃破すると1面に戻るループ構造。スコアアタックと連続プレイを前提にした設計で、当時のファミコンでは珍しく周回ごとに難易度が上昇する。音楽は軽快で親しみやすく、効果音のリズムとともに“明るいシューティング”という新しい文脈を打ち立てた。
それまでのSTGが『ゼビウス』のように硬質でSF的だったのに対し、『ツインビー』は柔らかく人間味を帯びた方向へ転換した。その路線は後の『パロディウス』『スターパロジャー』といったコナミのユーモラス路線の起点にもなった。世界観は平和的で、敵も野菜や玩具のような形状。だが、プレイヤーの操作は常に緊張を強いられ、ベルを撃ち損ねた瞬間に強化が途切れ、次の波で一気に崩される。見た目の癒しと内側の焦燥、この矛盾こそが『ツインビー』という作品の真髄だった。
NAO総評
かわいい見た目に隠された緊張は、ベル一つで生死を分ける仕組みにあった。撃つか撃たないか、その一瞬の判断で運命が変わる。欲を出せば黄に戻り、慎重すぎれば逃す。プレイヤーは常に欲と理性の狭間で揺れている。『ツインビー』は戦闘ではなく心理戦のゲームだ。無邪気に笑う機体の中で、実際には確率と選択の計算が続いている。カラフルな雲の向こうには、冷たい数学が潜んでいた。
出典:NAONATSU総評
雲の上を飛ぶ世界は、もっと癒されるものだと思っていた。けれど実際は違った。ベルを追い、腕を失い、救急車を待つあいだに、かわいさなんてどこかへ消えた。雲の中で焦って、息を詰めて、また撃ちすぎる。色が黄に戻った瞬間の絶望を、いまだに覚えている。ツインビーは平和の象徴じゃなく、焦燥の化身だった。雲の向こうに癒しはなかったけれど、あの空気の張り詰めた感覚だけは、今も忘れられない。
出典:NATSU📘 説明書資料(ツインビー [RC807])
説明書:Internet Archive 所蔵版(ツインビー [RC807])
※TwinBee [RC807](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します




















































発売日:1986/01/04|価格:4900|メーカー:コナミ|ジャンル:シューティング
NAO: 鈴のタイミングで生死が決まる世界。
NATSU: 雲の中に癒しはなかった。