エピソード
トリビア
1985年7月12日にナムコから発売されたファミコン用アクションシューティング『ワープマン』は、1981年にアーケードで登場した『ワープ&ワープ』のリメイクにあたる作品で、より多彩な要素と2人プレイを追加した家庭用向けのアレンジ版として位置づけられている。当時のナムコットシリーズ第8弾にあたり、パッケージや説明書にも宇宙的なモチーフが強調されていた。プログラムは深谷正一が担当していたが、開発中に病没し、その後を大森田不可止が引き継いで完成させたとされる。
本作の最大の特徴は、プレイヤーが自由に「スペースワールド」と「メイズワールド」という2つの世界を行き来できる点である。スペースワールドではリニアガンによる直接射撃型のバトルが展開し、メイズワールドでは時限爆弾を用いた間接的な攻撃が中心となる。爆弾の爆発までの時間はボタンを押す長さで調整可能であり、自分の爆風に巻き込まれるとミスになるという緊張感が生まれていた。ワープは任意で行うことができ、同じワールドに留まって戦い続けることも可能だった。
登場する敵キャラクター「異次元ベム」には、分裂したり一定時間無敵になるなど個性的な挙動が多く、攻略パターンを考える戦略性が求められた。さらに、特定条件で出現する「ミステリーベム」や「エクストラベム」などの存在もゲーム性を深めており、「E・X・T・R・A」の文字をすべて集めることで残機が1UPする隠し要素も盛り込まれている。得点システムもユニークで、敵を倒す位置によってスコアが変化するほか、爆風で同時に複数のベムを巻き込むことでボーナス得点が得られる仕様となっていた。
2人同時プレイモードでは、Iコントローラーがホワイトワープマン、IIコントローラーがオレンジワープマンを担当。互いに攻撃を当てると一定時間操作不能になる仕掛けもあり、協力と妨害が入り混じる対戦的な楽しみ方が可能だった。ステージ数は48面でカンストし、それ以降は旗による面数表示が追いつかない仕様となっている。残機の表示は4までだが、内部的には5機以上も保持できる仕組みで、ファミコン初期にしては比較的複雑な管理を実装していた。
また、ゲーム中では一定条件でパワーアップターゲットが出現し、これを取ることで一時的に特殊弾(爆裂弾・吸着爆弾)が使用可能になる。特筆すべきは、このパワーアップが「対応するワールドとは逆の世界で出現する」という点で、プレイヤーはワープを駆使してリスクを取りながら強化を得るという構造になっていた。これは単純なアクションに思考の要素を加えた設計であり、後のナムコ作品にも見られるゲーム性の先駆けといえる。
音楽は慶野由利子、小沢純子、大野木宜幸らナムコサウンドチームが担当し、電子的ながら耳に残る効果音と短いループメロディが印象的だった。ゲーム中ではBGMよりも効果音の存在感が強く、特にワープ時の電子音は当時のプレイヤーに強い印象を残した。グラフィックもカラフルで、同時期の『ゼビウス』や『ギャラガ』のようなメカニカルさとは異なる、丸みを帯びた可愛らしさが特徴であった。
アーケード版『ワープ&ワープ』との比較では、2人同時プレイやエクストラベムの導入など大幅な進化が見られる。原作では単色キャラ・単発ショットだったのに対し、本作は滑らかな操作性と色彩表現で家庭用の完成度を高めていた。リセットしてもハイスコアが残る仕様や、爆風連鎖による高得点システムもファミコン版独自の強化点であり、単なる移植に留まらない独自性が評価されている。
その後、本作は2020年にNintendo Switch向け『ナムコットコレクション』の追加タイトルとして復刻された。オリジナル発売から35年を経てもなお、ワープ音と爆風音が奏でる独特のリズムは健在であり、初期ナムコの創意が詰まった一作として再評価されている。
NAO:総評
ワープで行き来するだけの単純な構造なのに、どこか深いんだよな。銃と爆弾、攻撃手段が変わるだけで頭の使い方まで変わる。油断して爆風に巻き込まれた瞬間、自分の未熟さを笑うしかなかったぜ。ベムたちの動きもいやに哲学的で、近づきすぎれば自滅するし、離れすぎても逃げられる。単純に見えて、実は「間合いの心理戦」なんだよ。派手なBGMも演出もないのに、手の中で宇宙と迷路を往復するこの感覚――ナムコの抽象性って、こういう形で息づいてたんだと思うぜ。
出典:NAONATSU:総評
ワープ音が鳴るたび、まるで別世界に吸い込まれるみたいで不思議だった。スペースとメイズ、光と影のように行き来するたびに、景色も心も切り替わるの。リニアガンで打つ緊張と、爆弾を置いて待つ静けさ――どちらも違う集中があったわ。二人で遊ぶと、敵より先に相手を撃って笑いあったりして、競争と協力が混ざる感じが心地よかった。ステージが進むたび旗が増えていくのを見て、「まだ行ける」と信じたあの頃の気持ちが、今も胸に残ってるの。
出典:NATSU📘 説明書資料(ワープマン [NWM-4500])
説明書:Internet Archive(ワープマン [NWM-4500])
※Warpman [NWM-4500](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します

















































発売日:1985年7月12日|価格:4500円|メーカー:ナムコ
NAO: フィールドを切り替えながら進める、珍しい2面構成のSTG。
NATSU: じわじわ来るワープ音と丸っこい敵がクセになる。