エピソード
トリビア
1987年7月3日に発売されたゾンビハンターは、メーカー名そのままにゲーム雑誌ハイスコアの企画から生まれた異色のアクションRPGだ。価格は4900円で、当時の棚ではアクションとRPGの境目に置かれた。舞台はパルマの都、四大精霊に守られてきた世界で土の精霊ドルゴが生命の源を奪い、地下迷宮へと逃げ込む。プレイヤーは風の精霊に選ばれた戦士として地上から地下へ潜り、装備を整えながら救出を目指す。タイトル画面を抜けると物語とスタッフロールが流れ、いきなり世界観を語り切ってから放り出すのがいかにもこの時代らしい。強い単語で釣っておきながら、画づくりはどこか素朴で、しかし当時の空気を知る人ほどこの素朴さに理由が見える。もともとエスキモーのアイス菓子の懸賞品として企画され、広告会社も絡んだプレゼント施策から市販へ進んだ経緯があるため、ゲームとしての完成度よりも先に、企画そのものの勢いが作品の輪郭を作っている。
遊びは横視点のアクションで道中を進め、敵と接触すると画面が切り替わって戦闘が始まる構成で、経験値と所持金を得て武器や防具を買い足すことで前へ進む。戦闘は一度に最大四体が出現し、ステージごとに一定数の敵を倒し切らないと先へ進めない。敵を画面外へ追い出して数を減らすこともできるが、結局は総数を稼がないと扉が開かないので、移動と戦いが同じ重さで積み上がる。しかも店は看板で誘導されず、最初の面で左端へ戻ると入れるなど、存在自体が小ネタのように隠されている。セーブや中断の合言葉も用意されていないため、うまく流れに乗れるかどうかが一日の勝負になる。一本道に見えて左右の分岐や地下階層があり、暗い場所では敵の姿が黒い影に変わり、表示される名前も一律でゾンビになる。ここで蝋燭を手に入れると、敵が本来の姿と名前に戻るという仕掛けがあり、道具が単なる回復や攻撃ではなく探索の感触を変える。タイトル画面にはセレクトで難度が上がる別モードが用意され、二本目の遊びをさりげなく仕込むあたりも企画物らしいサービス精神だ。さらに二コンのマイクに息を吹きかけると、ロゴの蝋燭の炎が揺れたり消えたりする遊び心まである。迷路を明示しない不親切さと、軽い操作感の対比が、遊んだ後の印象を余計に濃くする。
裏側の話も面白い。企画母体のハイスコア側が編集長の伝手でアイスのプレミアム企画を持ち込み、広告会社の博報堂も関わる形で始まったとされる。のちに市販品として流通し、パッケージやカートリッジの色にまつわる噂まで生んだ。市販版に見られる茶色いカートリッジは、懸賞用の試作品が混じったのではないかという都市伝説が語られたが、EPROMを採用した個体が存在したことが背景にあると整理されている。また海外向けにはゾンビマスターの名でアクティビジョンから出る予定があったものの、広告だけが残って中止になったという話も伝わる。クレジットを見ると、演出とプログラムを同一人物が担い、キャラクターデザインや音の担当が分かれる小さなチーム体制で、懸賞から市販へ走り切るには十分な機動力があったのだろう。音声合成でメーカー名やタイトルを喋らせ、ゲームオーバーで煽る台詞まで入れるあたりに、当時の新技術への憧れと挑発が同居している。さらに1987年の国内ゲーム賞の一覧では、批評家賞の候補として名前が挙がっており、企画物の色が強いのに埋もれきらなかったことが分かる。
結果としてゾンビハンターは、完成度の高さで静かに愛されるタイプというより、企画の生臭さとゲームの素朴さが一体化して記憶に刺さる作品になった。何をして良いのか分からない時間が確かにあるのに、ひとたび仕掛けを掴むと手触りは軽快で、装備を買って地下へもう一段潜るだけで昨日より少し強くなれる。その小さな上達が、当時の子どもにとっては十分な冒険だった。アイスの当たりを夢見て応募券を集め、手に入れたら友だちと情報を回し合い、つまずきごと笑い話にしていく。そんな1987年の遊び方まで込みで、この一本は完成している。
NAO総評
ゾンビハンターアイスを買った記憶が残るほど、この作品は遊ぶ前から物語が始まっている。ゲーム雑誌の企画と懸賞から生まれ、市販版へ流れ込んだ経緯まで含めて、当時の熱と商売の匂いがむき出しだ。それでいて中身は案外まじめで、横から切り込む戦いと装備のやりくりが噛み合う。だが店の場所も先も黙って隠すから、気分はずっと薄暗い。迷子の理不尽さを、企画物の勢いで押し切った感じが痛快でもある。大人の目線だと粗が見えるのに、子どもの頃の高揚だけは綺麗に残る。
出典:NAONATSU総評
音と操作感の軽さが、まず身体に入ってくる。だからこそ、暗い地下で何をして良いのか分からなくなる瞬間が来ると、急に心細い。でも蝋燭一つで敵の姿や名前が変わったり、タイトル画面の小ネタが仕込まれていたり、小さな驚きが次の一歩をくれる。説明が少ない時代の冒険は、つまずきも含めて大作感があった。気付けば地味な作業のはずなのに、もう少しだけ潜ってみたくなる。友だちと情報を交換して、やっと道がつながった時の嬉しさも忘れない。
出典:NATSU
📘 説明書資料(ゾンビハンター [HSS-ZO])
説明書:げーむのせつめいしょ 所蔵版(ゾンビハンター [HSS-ZO])
※zombie-hunter [HSS-ZO](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※げーむのせつめいしょ様による保存資料です / 権利は各社に帰属します












発売日:1987/07/03|価格:4900円|メーカー:ハイスコア|ジャンル:アクションRPG
NAO: ゾンビハンターアイスを買った思い出
NATSU: 音と操作感の軽さに妙な中毒性がある作品