エピソード
トリビア
1985年9月9日にナムコから発売された『バトルシティー』は、単なる戦車ゲームに見えて、家庭用ゲーム史の中でも特に“協力プレイ”という概念を根付かせた作品である。プレイヤーは小型戦車を操作し、次々に出現する敵戦車を撃破しながら、自陣のシンボル「ワシ印(イーグル)」を守り抜く。全35ステージを通して敵を20輌倒せばステージクリア、だが本拠地が破壊された瞬間にゲームオーバーという明確な敗北条件が設けられている。この“守ることが勝利条件”という発想こそが、当時としては画期的だった。 ゲーム画面はシンプルな俯瞰視点。レンガ、鉄壁、水、草、氷といった地形がマス目状に配置され、それぞれが弾の通過や移動を制限する。たとえばレンガは自弾で破壊できるが鉄壁は貫通できず、水上では敵も味方も通行できない。つまり限られたマップ内で、いかに射線を確保し、どのタイミングで壁を壊すか——その判断が勝敗を分ける。さらに、点滅する敵を倒すと出現するパワーアップアイテムが戦局を一変させた。敵を一斉破壊する「グレネード」、自陣を鉄壁で補強する「スパナ」、一定時間敵を停止させる「時計」、無敵になる「ヘルメット」、そして連射力・弾速・貫通力を高める「星」。特に星は3段階まで強化でき、最終段階で鉄壁を貫通できるようになる。この一瞬の強化をめぐる駆け引きが、シンプルな画面の中で激しいドラマを生んだ。 本作の真価は、二人同時プレイにある。二人で協力して敵を迎え撃つ緊張感と、一方で誤射ひとつで味方を壊滅させるスリル。お互いに「星を譲るか奪うか」「前線と守備、どちらを担当するか」を相談しながら進める過程には、家庭用ゲームならではの“共闘”の芽があった。ところが同時に、いたずら心が芽生えればすぐに「友情破壊ゲーム」に変貌する。味方を誤射したり、わざと陣地の壁を壊したり、星を横取りしたり——そんな悪ふざけを笑い合いながら、友人同士がテレビの前で熱くなっていた。協力と裏切りのバランス、その自由さこそが『バトルシティー』の面白さだった。
もう一つ忘れられないのが「デザインモード」である。プレイヤー自身がブロックを自由に配置してマップを作れるという仕組みは、1985年という時代を考えると驚くほど先進的だった。子どもたちは真剣に“難関ステージ”を作ったり、逆におままごとのようなレイアウトを描いて遊んだり。オリジナルのマップを友人に見せ合うその体験は、後の『マリオメーカー』や『どうぶつの森』にも通じる“創造する遊び”の原型だったといえる。
プログラム的にも完成度が高く、敵AIは単純ながら、マップ構成と出現位置のバランスにより常に緊張感が保たれる。1ステージが短いため「もう1回!」と繰り返してしまう中毒性があり、難易度の上がる後半では、一発の判断ミスで即敗北という厳しさもあった。グラフィックは地味だが、軽快な効果音と破壊の快感、ステージクリア時の短いファンファーレが、何ともいえない達成感を生んでいた。 『バトルシティー』はナムコがファミコン黎明期に送り出したタイトルの中でも、特に“家庭で二人遊ぶ”という体験を強く意識した作品だった。『ギャラガ』や『ゼビウス』のようなアーケード的快感に対し、本作はリビングでの共同体験を重視した。今でも語り継がれるのは、単なる懐かしさではなく、そこに確かに“友達と笑いながら戦った時間”があったからだ。守り抜く緊張と、壊して笑う自由。『バトルシティー』は、ゲームが「競う」だけでなく「共に遊ぶ」ための道を切り開いた一本だった。NAO:総評
攻めるか守るか、星を譲るか奪うか——判断が毎秒変わるのが最高だぜ。連射MAXで壁をブチ抜き、点滅敵から時止めを引いたら一気呵成。けど調子に乗って味方を誤射、ワシ印を自分で割って終了……“強さ”と“危うさ”が隣り合わせの設計がニクい。二人で役割分担がハマった時の戦線制圧は中毒級、悪戯が過ぎた時の友情崩壊もまた名物。攻防・協力・破壊の三拍子を、レンガと鉄と一発の弾で表現しきったミニマル傑作だ。
出典:NAONATSU:総評
守るべき場所があるだけで、シューティングがこんなに緊張するんだって知ったの。星の配分や壁の補強を声で合わせた瞬間、画面の向こうに“チーム”が生まれる。味方の一発がワシ印を砕いて全てが灰になる、その儚さも含めて好き。デザインモードで作った雑な迷路を二人で笑いながら検証した放課後まで含めて、『バトルシティー』は“誰と遊ぶか”のゲームだったと思う。
出典:NATSU📘 説明書資料(バトルシティー [NBC-4500])
説明書:任天堂公式(バトルシティー [NBC-4500])
※Battle City [NBC-4500](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet出典:※任天堂公式によるウェブページです / 権利は各社に帰属します

















































発売日:1985年9月9日|価格:4500円|メーカー:ナムコ
NAO: 守るゲームという概念を教えてくれた先駆者。
NATSU: タンクバトルで友情破壊、あると思います。