エピソード
トリビア
1986年2月8日、カプコンはファミリーコンピュータ向けに『ソンソン』を発売した。価格は4900円。1984年に同社がアーケードで発表した同名タイトルの移植版であり、開発はマイクロニクスが担当した。西遊記をモチーフに、孫悟空を思わせる少年“ソンソン”と仲間“トントン”が果物の浮かぶ天地を駆け抜ける、強制横スクロール型のアクションシューティングである。外見は牧歌的だが、内部構造は極めてストイックで、難度の高い敵配置とスクロール制約が特徴だった。
画面は横方向に自動で流れ続ける六本のレーンで構成され、プレイヤーは上下移動で通路を行き来しながら、AボタンまたはBボタンで弾を発射する。敵を倒すと果物や野菜などの得点アイテムが出現し、これを回収してスコアを稼ぐのが主目的である。通路の位置やスクロール速度が絶えず変化するため、反射的な操作に加えて先読みも求められる。通路の上下にいる敵を見極め、適切なラインを保ちながら進む感覚は、単純なようで高度な集中を要する。一定条件を満たすと竹の子や高得点アイテムが出現するボーナス的要素もあり、画面上は常にリズムの変化に満ちていた。
敵は妖怪や動物を模したデザインで、飛行や跳躍など動きが多彩だ。弾は一定間隔でしか撃てず、連射性能に頼らない立ち回りが重要となる。敵の弾や接触でミスすると、ソンソンは雲に乗って一時的に無敵状態となり、一定時間で再開可能。この“復帰演出”はアーケード版にも見られた特徴で、ファミコン版でも再現されている。二人同時プレイでは、1Pがソンソン、2Pがトントンを操作し、上下レーンを分担して進行。協力して敵を分け合う戦略性がありながら、スコア競争では微妙な駆け引きも生まれた。
アーケード版との比較では、FC版はハード性能の制約により処理落ちやスプライトのチラつきが頻発した。敵や弾が多い場面では画面の明滅が激しく、視認性が著しく低下することもあった。だが、その“見えにくさ”が逆に緊張感を高め、慎重なプレイを誘発する効果もあった。プレイヤーは単に敵と戦うのではなく、ハードの描画限界とも戦っていたのである。敵出現のテンポは速く、アイテム回収と回避を両立させるには反射神経だけでなく、心の余裕が不可欠だった。見た目のポップさとは裏腹に、集中力を持続できるかどうかが勝敗を左右する構造だった。
ステージは特定の区切りを持たず、一定距離を進むごとに背景が変化する連続構成である。最終的な目的地は「天竺」とされ、長い旅路を耐え抜いた者だけが到達できる。終盤では敵弾の密度が上がり、避けるというよりは流れに乗って突破するような展開となる。FC版ではスコアカウンタが上限近くまで伸びるとリセットされる仕様があり、スコアを追うプレイヤーにとっては一種の精神修行のようでもあった。
アーケードほどの滑らかさはないものの、当時の家庭用としては十分な再現度を持ち、音楽や効果音も印象的にアレンジされている。森安也子による原曲のメロディーを活かしつつ、ファミコン特有のチップ音が軽快さを添えた。見た目は童話的、内容は過酷。そのギャップが“ファミコン黎明期の洗礼”として記憶に残る一本となった。華やかな画面の裏で、プレイヤーはレーンの選択と連射間隔を常に天秤にかけ、無数の弾幕の中を突き進む。最後まで辿り着けるかは、腕前よりも集中力と心の強さ次第だった。
NAO:総評
『ソンソン』は見た目よりはるかにハードな作品だった。六本のレーンがあるだけで安心してはいけない。敵は斜めに突っ込み、弾は背景に紛れ、そして画面そのものがチラついて視界を奪う。これは単なるアクションではなく、視覚と神経を削る修行だ。少しでも気を抜けば、自分がどのレーンにいるかすら見失う。見えるのは可愛い悟空、しかし戦っているのはカプコンでも敵でもない。自分の集中力と、ファミコンという不完全な世界そのものだった。
出典:NAONATSU:総評
テンポが落ちても、画面が揺れても、指を止めなかった。果物を取り、仲間を守り、いつか天竺に辿り着けると信じて進んだ。そんな純粋な気持ちが最後に試されるのが『ソンソン』だったと思う。敵が多く、弾も多く、心が折れそうになるたびに、BGMがまた軽やかに鳴る。その音に背中を押されて、もう一度スタートを押す。派手なエンディングもスタッフロールもない。それでもスクロールの向こうに希望を見た。たぶんゲームの中で初めて、心の強さを試された気がする。
出典:NATSU📘 説明書資料(ソンソン [CAP-SS])
説明書:Internet Archive 所蔵版(ソンソン [CAP-SS])
※Son Son [CAP-SS](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属しますソンソンのうた
さあ 行くぜ度胸はついたか迷いはないか 進め 敵のあらゆる攻撃 試練に耐えて たまにーは失敗する事もあるけーれど
気長に行くぜ いりゃんさんすーとんなんしゃーぺー
おいらの力を見せてやーる 10人100人まとめてかかって来い!さあ 目指せ天竺 我らが希望の国 今 知恵と勇気とパワーを体に纏い へいばよう 山賊いろいろーいるけーれど
怖くはないさ いりゃんさんすーとんなんしゃーぺー
見たか聞いたか隠しわーざ 10人100人まとめてかかって来い!出典:archive.org

















































発売日:1986/02/08|価格:4900|メーカー:カプコン|ジャンル:アクション
NAO: 見かけよりハードなゲーム性。チラつき。。
NATSU: ラストまで突っ走れるかは心の強さ次第。