エピソード
トリビア
村上もとかの剣道漫画『六三四の剣』を題材に、1986年8月8日にタイトーから発売されたファミコン用ソフト。1人用だけでなく、全国大会編を土台にした対戦も遊べるのが当時としては目立つ。ジャンル表記は横スクロールアクションだが、内容は単純なアクションだけに収まらない。原作が連載で積み上げた熱血をそのまま再現するのではなく、「走って鍛える修行の横スクロール」と「一対一で勝ち抜く剣道勝負」を同居させた変則構成にしてある。
特訓編→荒修業編→道場破り編の三面を抜けると、四面の全国大会編で急に試合形式へ切り替わる。画面越しに汗を感じていたのに、次の瞬間には読み合いの冷たさが始まるわけだ。しかもステージ曲は、アニメ主題歌「裸足のソルジャー」のアレンジ。耳だけはいつも少年漫画のまま背中を押してくる。このギャップが当時の子どもには強烈で、修行と勝負の切り替えでゲームの表情がころころ変わる。
修行の面は、犬の十一より先にゴールするのが目的。ジャンプがB、攻撃がAという逆配置のまま、歩きと跳び、竹刀の上中下段を体で覚えさせられる。障害物を叩いて出す竹刀も、どの段で叩いたかで出現する段が決まるなど、練習の手つきまでゲームが見張っている。拾った竹刀は上中下段それぞれ、大会編の必殺技回数を増やすため、どの段を集めるかがそのまま後半の勝ち筋になる。
道中の道具も癖が強い。かえるで跳躍が伸び、くつで足が速くなる代わりに着地で滑りやすくなる。面で一定時間の無敵がつき、おにぎり・バンソウコウ・薬で体力が戻り、珠で残機が増える。ハートを取れば必殺技回数が一番多い段に揃うので、段の偏りが救われる。さらに、カギを拾うとかなり先まで高速で運ばれ、移動中に竹刀へ触れるとそのまま入手できる。短距離走なのに寄り道と勝負が同時に起きるのが面白い。骨を拾えば先行した十一を自分の位置へ戻せるため、追いかけっこが一度だけ仕切り直せる。最後に「?」を拾うと背景の裏へ入り込めるなど、ひと息つける場所が画面の外側に用意されている。小さな道具が修行の味付けになっている。
全国大会編は五人勝ち抜きの試合で、有働大吾・乾俊一・大石巌・日高剣介を越えて、決勝で東堂修羅に挑む流れ。上中下段に構えている間はガードが発生し、相手の攻撃を無効化するため、横スクロールで鍛えた反射神経だけでは足りない。構えの高さ、間合い、引き際を覚えないと一気に持っていかれる。ここで初めて剣道らしい駆け引きが顔を出す。
攻撃は上中下段を打ち分ける必要があり、不用意に同じ段を振ると読まれやすい。修行の面で集めた竹刀の本数が必殺技の使用回数に直結し、五十本以上集めた段は攻撃ボタン押しっぱなしで連打扱いになる。走りで欲張った人ほど剣道で手数が増える――漫画の努力を数字へ変換するような仕組みがあるわけだ。全面クリア後に始まる裏面では敵の動きが速くなり、同じ道が別物の修行になる。覚えたと思ったタイミングで、また手が追いつかなくなる。
二人用は全国大会編を土台にした団体戦で、六三四チームと修羅チームの五対五が固定選手で組まれる。三本先取した側が勝つという割り切った遊びやすさがある。その一方で、修行の面の敵は竹刀一撃で倒せるのに、竹槍が右上から落ちたり、矢が障害物を貫通して飛んだりと、嫌な角度で迫ってくる。デザインも原作の世界観から外れた物が多く、掃除のおばちゃん、足のあるバケツ、ピンクの子豚が平然と混ざる。叩かないと出てこないマウマウのような隠れ敵まで仕込まれている。
弾を撃つ敵は池の中のクジリンだけで、最高得点なのに居場所の都合でほぼ一機と引き換えになるという変な美学もある。試合パートの作りは、1984年のアーケード作品『グレートソードマン』の剣道モードに似た匂いを残し、同じ血筋の操作感が漫画題材の中へ紛れ込んだようにも見える。タイトーの営業担当だった中村栄が、ゲーム化決定の際に剣術や決闘の要素を思い出してキャラものにアレンジしようとした、という逸話まで残る。ファミリーコンピュータMagazineでは19.57点の採点が記録されており、荒削りでも忘れにくい手触りが当時から語られていたことが分かる。
二周目まで抜けて真のエンディングに届いた人だけが、修行の完走感を味わえる。今も独特だ。妙に忘れにくいね。
NAO総評
竹刀の音がやけに耳に残るのに、やっていることは短距離走と読み合いの二段構えで、BがジャンプでAが攻撃という逆配置まで含めて容赦なく手を鍛えてくるのが面白い、敵は一撃で消えるのにこちらは油断で落ちるし、集めた竹刀が勝負の手数に変わる仕掛けも露骨で、少年漫画の努力をそのまま数値化したような冷たさがある、かえるやくつで身体感覚を揺らしつつゴールを急がせるのも上手く、剣道勝負の手触りはグレートソードマン系の匂いもして、キャラ物なのに競技の顔を出す瞬間があるのが妙に渋く、裏面で敵が加速して記憶が通じなくなるあたりまで含めて、修行とは要するに慣れ直しだと教えてくる、汗をかくのは指先で、最後に残るのは反射だ。
出典:NAONATSU総評
修行の面を走っているだけなのに、竹刀の音と主題歌のメロディで胸が熱くなって、十一に追われる焦りがそのまま少年漫画の修行に重なるのが好きだった、かえるで跳べるようになったり、くつで速くなって滑ったり、ちいさな道具が体の感覚を変えてくるから、画面の中の汗がこっちの手にも伝わるみたいで、全国大会に入った瞬間の静けさもまた良くて、集めた竹刀が必殺技になって努力が報われるのがうれしい、友だちと団体戦を選んで三本先取に一喜一憂したり、掃除のおばちゃんやバケツの敵に笑ったりしながら、荒いのに忘れられない一本になっていて、裏面まで行けた日は少しだけ自分も強くなった気がした、今でもたまにまた遊びたくなる、ふしぎだ。
出典:NATSU
📘 説明書資料(六三四の剣 ただいま修行中 [TFC-MK4900])
説明書:Internet Archive(六三四の剣 ただいま修行中 [TFC-MK4900])
※Musashi no Ken - Tadaima Shugyou Chuu [TFC-MK4900](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 権利は各社に帰属します












発売日:1986/08/06|価格:4900円|メーカー:タイトー|ジャンル:アクション
NAO: 竹刀の音がリアルで、画面越しに汗を感じる修行。
NATSU: 修行も戦いも一体化。少年漫画的ロマンが詰まってた。