エピソード
トリビア
1986年10月23日にジャレコから発売されたファミコン用アクションが、うる星やつら ラムのウエディングベルだ。題名だけ見ると原作の恋愛喜劇をそのまま遊べそうだが、芯にあるのは火の手が迫る建物から上へ逃げていく脱出型の作りで、屋上の乗り物に飛びついて抜ける流れが基本になる。ラムを操作して階を上がり続けるだけの単純さなのに、落下すると火に巻かれる緊張があり、当時の家庭用としては意外と手触りが硬い。ステージが進むほど主人公の姿が変わっていく仕掛けも用意され、幼い姿から大人の姿へと段階が移ることで、進行の節目が分かりやすくなる。交代しながら遊ぶ形にも対応している。
制作の背景が、この作品をトリビア寄りに押し上げている。元になったのはアーケードのモモコ120パーセントで、そこではテレビアニメの主題歌であるラムのラブソングが流れていた。ファミコン移植にあたり、その縁をさらに踏み込ませて、登場人物をうる星やつらの面々に差し替えたのが本作だと説明されている。英語版の資料では、アーケード版は当初うる星やつら題材として企画されたが許諾を得られず、家庭用移植でライセンスを得たため本作の形になったとされる。音楽と版権と移植が一本の線でつながる例として、八十年代の空気が濃い。開発は発売元のジャレコ表記で語られることが多い一方で、資料によってはトーセが開発として挙げられるなど、クレジットの揺れまで含めて時代を感じさせる。
中身も単なるガワ替えで終わっていない。電撃攻撃や、助けに来るサポートキャラ、一定時間の無敵などが加わり、元のモモコ120パーセントより難度を下げて遊びやすくしたとされる。特定の場所で出るテクニックキャラは、得点だけでなく防御や攻撃の補助にも関わり、原作ファン向けの顔見せとも噛み合う。逆に言えば、原作らしさの再現を期待すると肩透かしになりやすく、シリーズファンの評価が割れたという語られ方もある。それでも、この一本にしかない奇妙さは確かに残る。ラムが飛べないことを受け入れた瞬間から、これはアニメの追体験ではなく、当時の家庭用が作り出した別の遊びとして立ち上がってくる。
遊びの中身で語りやすいのは、細かな仕様変更の積み重ねだ。ゴールに当たる乗り物がUFOになり、しかも動くようになったという差は、ただの置き換え以上に遊び方へ影響する。ワープも扉に入る形ではなく、画面が切り替わって移動する作りに変えられたとされ、テンポが軽くなった。動く床は最初から動かず、スイッチを取って初めて起動するため、見えない前提を探す面白さと、知らないと詰まりかける癖が同居する。パワーアップの積み上げは廃止され、その代わりにテクニックキャラが導入されたという説明があり、青い鳥で服を着て一度だけ耐えられたり、テンちゃんが頭上に来て火を吐いてくれたり、面堂が前で刀を振るったりと、原作の顔が実利に結びつく瞬間がある。星で一定時間無敵になったり、純情ギツネでボーナスステージへ飛べたりと、助け舟が多いのも家庭用らしい配慮だ。ボーナスステージの間だけラムが飛べるというのも、飛べない問題への可愛い落とし所になっている。こうした仕掛けは、原作を知らない人にも通じる遊びのリズムを作る一方で、原作の物語を期待した人ほど違和感が残りやすい。街が揺れて時を越えるという筋書きが語られることもあり、成長や結婚といった展開がゲーム都合のループ構造と結びついて、妙に夢のような後味を残す。結局のところ、この作品は原作の名場面集ではなく、移植元の骨格に版権キャラを結びつけて成立させた工夫の記録だ。八十年代の家庭用ソフトが持っていた、割り切りと手作業の発明、その両方が一つのカートリッジに詰め込まれている。
NAO総評
原作の看板を背負いながら、土台は別作品の移植という事情がまず面白い。アーケード版で主題歌が流れ、家庭用ではその縁を本当に形にしてしまう発想は、当時の版権ビジネスとゲーム開発の距離感をそのまま映している。ラムが飛べない、幼児から成長していく、結婚で終わってまた戻る。このズレが批判点にもなるが、ゲームとしては敵の圧を読み、電撃の射程と足場の癖を体で覚える作りで、無駄に甘くない。奇妙さと実務の同居が、八十年代らしい皮肉な味だ。要するに、アニメの再現ではなく、商売と技術の折衷案がそのまま遊びになった一本だ。
出典:NAONATSU総評
ラムちゃんが飛べないことに最初は笑ってしまうのに、気づけば足場を探して必死に上へ上へと逃げている。電撃を撃ちながら段差を越え、助けてくれる仲間が出ると少しだけ肩の力が抜ける。幼い姿から大人の姿へ変わっていく流れも、物語としては不思議だけれど、当時の子どもにとってはステージが進む実感そのものだった。原作の世界観と噛み合わない部分も含めて、ファミコンの箱に閉じこめられた一回きりの夏休みみたいに残る。うまくいかなくて何度もやり直すのに、主題歌のメロディが頭に残って、また電源を入れたくなるのが怖い。そういうゲームだね。
出典:NATSU
📘 説明書資料(うる星やつら ラムのウエディングベル[JF-10])
説明書:Internet Archive(うる星やつら ラムのウエディングベル[JF-10])
※Urusei Yatsura - Lum no Wedding Bell [JF-10]
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します












発売日:1986/10/23|価格:4900円|メーカー:ジャレコ|ジャンル:アクション
NAO: ラムちゃんより、背景に注目したくなる。細かい!
NATSU: ギャルゲーでもアクションでもない、不思議な味わい。