エピソード
トリビア
1987年10月20日にケムコから発売されたインドラの光は、価格5300円のRPGだ。しっかり作られているのに話題になりにくいという感想は、遊び始めの空気で決まってしまう。始まってすぐに世界の輪郭を教えてくれるタイプではなく、地名も人物も、手触りも、少しずつ自分で拾い集める必要がある。しかも当時の定番だった長いパスワードに頼らず、バッテリーバックアップでその場で記録できる仕様だったから、今の目線だと親切に見えるのに、当時は逆に説明なしで放り出された感が強くなる。何をすればいいか分からないのに、とりあえず動くと敵が出てきて、装備が整うまでの小さな敗北が続く。そこで迷子になった人ほど、このゲームは地味だと記憶に焼き付く。
ところが腰を据えて触ると、作りの真面目さがじわじわ出てくる。画面は上から見下ろす固定視点で、歩く感覚はゼルダの伝説のように落ち着いているのに、やっていることは経験とお金を積み上げて装備を整える王道のRPGだ。敵はシンボルとして見える形で出現し、触れると戦闘へ入るので、不意打ちよりも自分の判断の重さが目立つ。街へ戻って買い物をし、少し遠出しては戻るという反復が基本になり、意外と進めやすいと感じるのはこの設計のおかげだと思う。ただ、語りにくさも同居する。国や地域ごとに言語設定が違う仕掛けがあり、分かったつもりで話を聞くと肝心な情報が抜け落ちる。派手な名場面が用意されているというより、看板や会話や地形の読み合わせで詰まる。周りと盛り上がりにくいのは、ここで起きるドラマが静かすぎるからだ。
裏側の事実を知ると、この静けさにも理由が付く。制作スタッフはプロデューサーが道浦忍、ディレクターがしみずげんぞう、音楽が増野宏之と記録されていて、同社の過去作に関わった人材が中心になっている。加えて、同じ年に未来神話ジャーヴァスがバッテリーバックアップの先例として挙げられ、本作もそれに続く形でパスワード不要の本格RPGとして受け止められたという文脈が残っている。さらに後年、携帯向けに分割配信や完全版が出たこと、2013年のケムコ作品のサウンドトラックに収録されたことまで記録がある。大作のように語り継がれなかった一方で、会社の中では確かな足跡として保存されてきた。
もう一つ面白い答え合わせが海外側の断片だ。英語版Wikipediaでは、1987年のスーパーマンの北米版で、別作品の曲の代わりにインドラの光の音楽が使われたと説明されている。つまりこのゲームの音は、国内では地味なRPGの音として埋もれやすいのに、別の場所では別の作品を支える素材として流用されるほど印象的だった可能性がある。こういう逸話は、語れる要素がなかったという感想を少しだけ裏切ってくれる。目立つ名シーンではなく、地味に整った仕組みと音が、時代の裏側で生き残っていた。だからインドラの光は、語りにくいまま終わるRPGではなく、語り方を変えればちゃんと語れるRPGでもある。
NAO総評
しっかり作られてるけど話題にならないタイプのRPG、という一言がいちばん刺さる。派手な山場を用意せず、反復で強くなる王道の骨組みを、見下ろし固定視点とシンボル移動で淡々と回させる。セーブが当たり前にできる先進性すら、当時の空気だと地味さに埋もれるのが皮肉だ。国ごとに言語が違う仕掛けも面白いのに、面白さが静かすぎて噂になりにくい。ケムコの実直さが、評価より先に沈黙を生むタイプの一本だ。
出典:NAONATSU総評
意外と進めやすいけど、周りに語れる要素がなかった、という感覚も分かる。敵を見て避けられるから理不尽は減るのに、進め方の説明は薄くて、迷いの時間が長い。町へ戻って装備を整える反復は楽で、セーブもできるのに、心が震える派手な見せ場は自分で見つけるしかない。だからこそ、当時は友だちと同じ言葉で盛り上がれなかった。でも静かな世界を少しずつ理解していく手応えは残っていて、今思い返すと地味な優しさが確かにあった。
出典:NATSU
📘 説明書資料(インドラの光 [KSC-IN])
説明書:レトロゲームの説明書保管庫(インドラの光 [KSC-IN])
※Indra-no-hikari [KSC-IN](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※レトロゲームの説明書保管庫様による保存資料です。 / 権利は各社に帰属します。












発売日:1987/10/20|価格:5300円|メーカー:ケムコ|ジャンル:RPG
NAO: しっかり作られてるけど話題にならないタイプのRPG
NATSU: 意外と進めやすいけど、周りに語れる要素がなかった