ファミリートレーナーシリーズ
エピソード
トリビア
1987年2月26日にバンダイから発売されたファミリートレーナー エアロビスタジオは、家庭用ゲームでありながら体を動かすこと自体を主役に据えた、かなり早い時代のフィットネスソフトだ。価格は5800円で、ジャンルはスポーツに分類される。専用の体感装置ファミリートレーナー向けソフトの第3弾で、付属マットのB面にある12個のキーを手足で踏み分け、画面のインストラクターや手足アイコンの指示に合わせてエアロビクスダンスをこなしていく。ゲームの腕前というより、呼吸が乱れるかどうかが進行の合図になるあたりが、当時のファミコン作品としては異色だ。
システム面で面白いのは、運動を続けさせる仕掛けと、遊びに引き戻す仕掛けが同居しているところだ。エクササイズスタジオは基本の流れで、ミスが重なると次の動きへ進めない場面もあり、テンポの良さよりも正確さを求める作りになっている。スタンプはその継続用で、今日の運動を明日へつなぐ意識が見える。エアロビコンテストは5分から20分までの各コースが用意され、時間の長さがそのまま負荷になる。いっぽうプレイスタジオでは空気が変わり、キーを鍵盤代わりにして自由に演奏するメロディステップや、猫踏んじゃったのような課題曲を指示どおりに弾くメロディダンシングがある。さらにBGMを切り、画面だけを頼りに踏み分けるエアロステッピングも用意され、音に乗る楽しさと、無音でフォームを合わせる苦行が同じソフトに同居する。海外データベースでは音楽やリズムの遊びとして分類されることもあり、運動ソフトなのに音ゲーの系譜に置かれやすい理由がここにある。キー配置は音階に見立てて並べられており、中心の2つは使わないという割り切りも含めて、マットを単なる入力装置以上に遊ばせようとしている。全ステージをクリアするとミス エアロビの称号が授与されるのも、ゲームらしいごほうびだ。
開発名義については資料によって記載が分かれ、開発元としてTRYの名が挙がる一方で、シリーズ全体の開発をヒューマンが担当したとする記述もある。いずれにせよ、画面の指示と音楽だけで動きの正否を成立させるために、キー入力を極端に単純化し、リズムと動作を同期させる設計に寄せたところが技術的な肝だ。ファミリートレーナーそのものは1986年に登場し、テレビの前で足踏みやジャンプをさせるという発想を家庭へ持ち込んだが、日本の住宅事情では振動や騒音が問題になりやすく、足ではなく両手でマットを叩く工夫が広まったとも紹介されている。真面目に足で踏めば運動量は確かに重く、手で叩けば静かだがフィットネスとしては別物になる。この揺れ幅が、健康志向なのに対象年齢が読み取りにくいという違和感を生みやすい。
北米ではDance Aerobicsの題で発売され、周辺機器もFamily Fun Fitnessを経てPower Padへと名称や権利の扱いが変わっていく。その後もシリーズ名は途切れず、二十年ほど後にWii向け新作が出て、さらにNintendo Switchでも形を変えて復活している。だから本作は、ファミコンのカートリッジという小さな箱の中に、当時のエクササイズ文化と周辺機器ビジネスと、音楽に合わせて入力する遊びの芽が同時に閉じ込められている。家庭用ゲームとして史上初めてBGMに合わせてダンスを踊る体感型ゲームだと紹介されることもあり、後年のダンスゲームや体感トレーニングの流れへつながる起点として語られやすい。ギネス世界記録のオンライン記録でも、本作を最初のリズムゲームとして紹介している。ゲーム誌の読者投票では点数が示されるが、評価の高低以上に、遊ぶか運動するかの境目を曖昧にした挑戦そのものがトリビアとして強い。プレイ後に残る疲労感まで含めて記憶に残り、見た目の地味さを裏切って、大作感のような満腹感だけはしっかり胸に残る作品だ。
NAO総評
健康ブームをそのままROMに詰めた結果、遊びと運動の境界が曖昧になった。親子向けの顔をしているのに、正しく踏むと息が上がり、ミスで止められるのが地味に厳しい。マットを置ける家かどうかで体験が変わるのも当時らしい現実だ。対象年齢の迷子感すら含めて、ファミコンが生活へ入り込もうとした野心が透けて見える。それでも鍵盤遊びのモードが入っているせいで、結局は運動より遊びが勝ってしまう瞬間がある。そこが惜しくも愛おしい。
出典:NAONATSU総評
体を動かすゲームって、言葉だけだと軽く聞こえるのに、これはちゃんと汗が出るのが驚きだった。テンポはゆっくりめでも、5分や10分のコースを真面目に踏むと足が重くなる。集合住宅なら手で叩いて静かに遊ぶ逃げ道もあって、その優しさも含めて当時の家庭向けだと思う。クリアしてミス エアロビをもらう頃には、胸の中に小さな大作感が残っている。画面の手足アイコンに合わせて動くのは単純だけど、うまく噛み合うと気持ちいい。翌日に少し筋肉痛が来ても、あの頃の居間の空気まで思い出せるのが不思議。
出典:NATSU
📘 説明書資料(エアロビスタジオ[FT-03])
説明書:Internet Archive 所蔵版(エアロビスタジオ[FT-03])
※Aerobics Studio [FT-03](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet
※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照。権利は各社に帰属します。






















発売日:1987/02/26|価格:5800円|メーカー:バンダイ|ジャンル:スポーツ
NAO: いちおう健康志向?対象年齢どこなんだ。
NATSU: 体動かすには…意外とキツい運動量だったかも。