北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ

堀井ミステリー三部作
エピソード
トリビア
1987年6月27日にエニックスから発売された北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆは、RPGが勢いを増す時代の真ん中で、会話と選択だけで旅情と緊張を引っぱるコマンド選択式の推理アドベンチャーとして異彩を放った。舞台は北海道で、摩周湖や屈斜路湖、網走刑務所や北浜駅、夕張の炭鉱跡といった実在の土地や風物が、事件の糸と一緒にプレイヤーの記憶へ絡みつく。画面の派手さで押すのではなく、土地の名前が持つ冷たさや距離感が、そのまま物語の温度になるタイプの作品で、だからこそ名作らしい風格が先に立つ。価格は5800円で、短い時間で遊び切る娯楽というより、昭和の旅番組めいた空気をまとった事件簿をじっくり読む感覚に近い。
遊び方は、入力で文章を打ち込むのではなく、画面に並ぶ行動の候補から選んで進める方式が核になっている。現場で調べる、誰かに話す、移動する、持ち物を確認するといった一見地味な繰り返しが、選択の順番と気づきの早さで表情を変え、正しい場所で正しい問いを投げたときだけ世界が一段深くなる。相棒役として登場する地元警察の猿渡俊介の存在も大きく、土地勘のある言葉が会話に混ざるたび、観光の高揚と捜査の焦りが同じ車窓に同居する。ミニゲーム的な寄り道や、当時ならではの大人びた描写が差し込まれる場面もあり、事件の重さ一辺倒にしない昭和の雑味が、結果として旅情ミステリの濃度を上げている。
この作品が面白いのは、物語の芯が観光地の列挙ではなく、取材と共同制作そのものから生まれているところだ。もともとはパソコン雑誌ログインと堀井雄二の共同企画として走り出し、雑誌側が企画と開発の追跡記事を担い、堀井がシナリオに専念するという分担で作られた。堀井がプログラムから離れてシナリオに集中した初めての作品でもあり、分担制作の難しさもあって開発期間は一年に及んだとされる。1983年の段階で北海道取材の記事が誌面に載っているのも象徴的で、土地の匂いを文章に落とし込むこと自体が企画の中心にあった。その延長線上で、のちにファミコン向けへ全面的に作り直されたことも意味深い。ROM容量の拡大が見えて移植の現実味が増したことで、取材まで進めていた別舞台の後継企画が頓挫したという証言も残り、当時の市場の熱と判断の速さが、作品の運命に直結していたことが分かる。
音の面でも、ゲームの雰囲気作りが一段上手い。ファミコン版の音楽は上野利幸が担当し、発売直後の1987年8月にはファミコン版の曲をもとにしたサウンドトラックがリリースされている。ゲームミュージックが商品として前に出ていく時代の入口で、事件の冷たさや移動の寂しさを、旋律の色で記憶に焼き付けたタイプだ。さらに後年、このタイトルはムック形式の再構成や配信型の復刻へ広がり、2024年には新作エピソードを加えたリメイクがSwitchとSteamで発売され、フルボイス化や遊びやすさの改善など現代向けの手当ても受けた。こうして振り返ると、北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆは、単に昔の名作というより、推理アドベンチャーの作法と市場の波に鍛えられながら生き延びてきた作品だと言える。静かな画面のまま、旅情と推理の気配だけで最後まで連れていく、その古い強さが今も残っている。
NAO総評
旅情ミステリの決定版と呼ばれる格の高さは確かにあって、実在の地名が出るだけで画面が冷える感じがするのが強い。だからこそ、紋切り型の捜査で詰む瞬間が痛い作品でもある。会話と移動の積み重ねが正解に触れた時だけ進むので、分かるまで止まる。ここが名作の顔と意地悪さの顔が同居する部分だと思う。
出典:NAONATSU総評
仲間と一緒に冒険するRPGとは違うのに、猿渡さんと北海道を巡るだけで旅の相棒感が出て、事件を追う緊張の中に不思議とぬくもりが残る。昭和の探偵ものが好きなら、地名や空気の描き方がたまらないはず。テンポの古さはあるけれど、その遅さが雪国の距離感に変わっていく感じが好きだった。
出典:NATSU
📘 説明書資料(北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ [HSP-07])
説明書:gamingalexandria.com 所蔵版(北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ [HSP-07])
※Okhotsk-ni-kiyu [HSP-07](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet
※当時の説明書はgamingalexandria.comに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します












発売日:1987/06/27|価格:5800円|メーカー:アスキー|ジャンル:アドベンチャー
NAO: 旅情ミステリの決定版。名作の風格がある
NATSU: 昭和の探偵ものが好きなら確実にハマるやつ