ジャレコレファミコン編シリーズ
エピソード
トリビア
1992年1月7日、ジャレコはファミリーコンピュータ向けに横スクロールアクション『ピザポップ(PIZZA POP!)』を発売した。定価は6,300円。開発はアークシステムワークス。物語はアメリカのとある街で働く若い配達員キッドが主人公で、恋人ベティーに贈る指輪を買うために日々配達で稼ぐ――という分かりやすい導入だが、ライバルの配達員ニックがことあるごとに妨害に現れ、配達そのものがステージの目的とゲーム的な障害設定に直結しているのが特徴だ。ゲーム全体は全7ステージ構成。スラム街、工事現場、建設中のビル、幽霊屋敷、ビーチ、工場といった舞台が連なり、各面のラストではその場所の“らしさ”に即した中ボス/仕掛けが待つ。3面と6面の終了時にはボーナスステージが挿入され、店長が投げるピザをオーブンへ連続投入するミニゲームとなる(全投球を落とさず処理できれば1UP)。スコアに応じたエクステンドやコンティニューもあり、アーケード的な“伸ばし”の文法が家庭用の手ざわりに落とし込まれている。
操作は十字キーで移動、Aでジャンプ、Bで攻撃。キッドの武器はピザへらで、ザコ敵はジャンプで一時的に“気絶”させられるが、倒し切るにはへら攻撃が基本という二段設計になっている。気絶してパイ状につぶれたネコやイヌなど一部の敵は、下方向入力で持ち上げ、Bで投げつける“スペシャルアタック”に転用できる。敵によって“踏めない”“へらが効かない”などの相性があり、状況に応じて攻め方を切り替える読み合いが生まれる。プレイ感は素直で、移動・攻撃・ジャンプの手順が明確に通る一方、配達のタイムリミットやニックの妨害(例:ドラム缶を落としてくる、動物をけしかける)がテンポを崩しにくるため、焦らず道中処理を安定させる工夫が大切になる。3面では前半に宅配バイク区間が挟まれ、障害物と敵車を避けながら目的地へ走り抜ける演出面のバリエーションも用意されている。2人プレイは“ツインプレイ”を選択する交互制で、ミスやクリアごとに交代する仕組みだ。
世界観は軽妙ながら、各面の作りは丁寧で、スラムではネコ・イヌ、不良少年といった“街の日常の厄介者”が配置され、工事現場や建設現場ではウインチやコンベアーが立体的な移動を要求する。幽霊屋敷では視覚的なギミックが増え、ビーチでは足場と敵の挙動が軽快に変化、終盤の工場では正確な足場処理とボスのパターン理解が問われる。スタッフクレジットにはゲームデザイナーKAMEKICHI、プログラマー岩永研一、グラフィックにKAYAMAN(萱島啓子)とKING JOE、音楽に小酒井順哉らが名を連ね、ファミコン末期らしいきめ細かな演出と実直なアクション設計でまとまっている。発売当時のクロスレビューは総合18/40点と控えめな評価だったが、短く引き締まった構成、敵相性と投げ返しの工夫、ボーナス面の緊張感など、繰り返しの遊びに耐える要素が多く、現在は“知る人ぞ知る佳作”として語られる機会が増えた。なお本作は2024年12月、シティコネクションの復刻企画「ジャレコレ ファミコン編」の一作としてNintendo Switch向けに配信され、現行機でも公式にプレイ可能になっている。
NAO:総評
題材が“ピザ配達”というだけで今のデリバリー文化を連想してしまうけれど、実際のゲームは小気味よい職人仕事。演出と音楽の明瞭さ、そして“配達を時間内に完遂する”という目的が、難しめのアクションを最後まで引っ張ってくれる。理不尽寄りに感じる場面もあるが、敵ごとの相性や投げ返しを理解していくとルートが整っていく感覚があり、単なる初見殺しで終わらないのが良い。配達という日常の行為に、ライバルの妨害や現場のギミックを重ね、遊びとしての起伏を自然に作っている。手を動かすほど音と画が気持ちよく絡んで、結局“もう一配達”と再挑戦してしまう完成度だ。
出典:NAONATSU:総評
最初に驚いたのは、へら一枚で攻守をやりくりする小さなデザインの密度。踏んで気絶→拾って投げる、へらで仕留める、ステージによってはバイクで走る、とリズムが細かく切り替わるのに、キャラクターの動きが丁寧だから混乱しない。犬猫が横から飛び出してくるいやらしさも含め、動きの“合図”が読み取りやすいので、負けた理由が分かりやすく次に活かせる。ステージが進むほど背景と敵の役割が噛み合っていく作りも楽しく、BGMのポップさが配達のテンポと妙に合っている。気づけば指が先に動くタイプのアクションで、難度は高めでも“分かった!”に繋がるから何度でも挑戦したくなる。
出典:NATSUジャレコレ ファミコン編
「ジャレコレ ファミコン編」は、シティコネクションが手がけるジャレコFC作品の復刻シリーズ。Nintendo Switch向けに順次配信し、タイトルBGM新アレンジ、字幕ガイド、アチーブメント、タイマー、当時の説明書・パッケージ閲覧などを搭載。2024年8月に始動し『ピンボールクエスト』等から展開、のちに『PIZZA POP!』も配信。
発売日:1992/01/07|価格:6300円|メーカー:ジャレコ|ジャンル:アクション
NAO: ピザ配達が題材とは時代を先取り?Uber感あるが難易度は鬼。
NATSU: キャラの動きが細かく凝ってて楽しい!でも犬猫の妨害はきつい。