エピソード
トリビア
1985年4月9日、任天堂がファミコン向けに『サッカー』を発売。定価は4,500円、型番はHVC-SC。のちのスポーツ系“定番1本”の原形とも言える作りで、開始前に「国の選択」「スキルレベル(1~5)」「ハーフの長さ(15/30/45分)」を決めてキックオフ。選べる国は、アメリカ/イギリス/フランス/西ドイツ/ブラジル/日本/スペインの7つ。ピッチは左右に広く、カメラが横スクロールで追従するため、攻撃時は視界の“先を読む”感覚が重要です。操作は攻撃側がA=シュート、B=パス、防御側はBでボールに近い選手へ操作権を切り替え。ゴール前の決定機では、矢印でシュート方向(高さ)を微調整する「狙い」が出て、GKの頭上を抜くかニアを撃ち抜くか、といった小さな駆け引きが生まれます。引き分けで試合が終わった場合は、勝敗がつくまでの「PK戦」に移行。各チーム5本ずつですが、どちらかが先に勝ちを決めた時点で終了します(それでも完全に同点のままなら“引き分け”の扱い)。スローイン/ゴールキック/コーナーキックも備え、ファウル由来の間接FK(オフサイド)を採用。画面制約の都合でオフサイドはハーフライン以遠に限って適用される、といった当時ならではのルール調整も盛り込まれています。
見た目は素朴でも、遊びの勘所は相当に実戦的。パスは「進行方向が合っている味方」にフラグが立つ仕掛けで、味方の動線を意識するとミスが激減。逆に守備側は、切り替え直後に“前へ1歩”入るだけでボールに寄り勝ちしやすく、数的不利でも粘れます。ナナメに運ぶ、ライン際で縦を作ってから中へ“折り返す”、などの基本がそのまま通用するうえ、ハーフ終了のホイッスルが鳴る瞬間にボールが飛んでいれば“そのシュートは有効”という終盤のドラマを生む仕様も効いています。さらに、本作独特の“演出としてのハーフタイム”。チアリーダーが登場する簡潔なショーが入り、次の45分(設定次第)に気分を切り替えられるのは、家庭用らしい一息です。
開発面の小ネタを添えると、開発はインテリジェントシステムズ、プロデューサーに上村雅之、音楽は近藤浩治。アーケード向けの『VS. Soccer』も併走しており、ファミコン/NESとVS.システム、さらに翌年にはディスクシステム版(店頭書き換えではなく通常販売のFDSソフト)という横展開で“任天堂スポーツ”の顔を固めていきました。現在はWii/Wii UのバーチャルコンソールやNintendo Switch Onlineでも配信され、当時の操作感のまま触れられます。いわゆる“チーム差”の数値公開はなく、どの国を選んでも基本の遊びは同じ。だからこそ、NAOの短評にある「GKの性能差がやたら目立つ」ような印象(=キーパーに触られると入らない、位置どりが強い等)は、プレイヤー側の“段取り”で克服していく対象になります。たとえばニアを見せてから高さを変える、コーナーでは低めの弾道を混ぜる、などの“ほんの一工夫”が、数点分の差になって返ってくる。NATSUの「広いピッチを活かせないもどかしさ」も、サイドで時間を作ってから一気に中へ通す——という“一本の線”が描けた瞬間に、スッと解けていく。要するに、“当たり前”のことを映す器がきっちりしているのが本作、というわけです。
NAO:総評
ゴールキーパーだけ性能おかしいだろ、って子供の頃は本気で文句言ってた。でも今遊ぶと、あの強さこそ“どう崩すか”を考える起点になってるんだよな。シュート時の矢印で高さを調整し、ニアを見せてからファーへ打つ、逆に低めで狙う……この駆け引きが妙に熱い。守備側も、切り替え直後に前へ一歩踏み込むだけで奪いやすいから、数字より段取りの巧さが問われる。チアが出てくるハーフタイム演出も地味に気持ちをリセットさせてくれる。昔は理不尽と思っていたGKの壁も、今触ると“崩しの練習台”としてありがたい存在に見えるのが面白い一本だぜ。
出典:NAONATSU:総評
ピッチの広さを使い切れないもどかしさは確かにあるけど、それを逆手にとって“置きパス”を覚えると一気に試合が変わる。サイドに張って縦へ出し、折り返しでニアを釣ってから高さで抜く、そんな小さな工夫でゴールが近づくのが楽しい。終盤、ホイッスルが鳴る瞬間に放ったシュートが飛んだままゴール判定になる演出も、短い試合に劇的なドラマを生む。2人対戦では相手の切り替え直後を狙う読み合いが白熱し、ただのパス交換も心理戦になるのが面白い。昔は広すぎると感じたフィールドも、今や“考える余地がある舞台”に思えてくる。少しの工夫がそのまま点に結びつくから、繰り返すほどに愛着が湧いてくる一本ね。
出典:NATSU📘 説明書資料(サッカー [HVC-SC])
説明書:Internet Archive(サッカー [HVC-SC])
※Soccer [HVC-SC](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します

















































発売日:1985年4月9日|価格:4500円|メーカー:任天堂
NAO: ゴールキーパーだけ明らかに性能違いすぎ。
NATSU: ピッチの広さを活かせない、もどかしさが逆に良い。