エピソード
トリビア
1985年の冬、デービーソフトから登場した『ヴォルガードII』は、青と赤のメカが飛び交う硬派な横スクロール・シューティングだ。プレイヤーは可変戦闘機ヴォルガードを操り、敵勢力の巨大コンピュータ「ズイガム・ボルド」を破壊するため、25のエリアを突き進んでいく。タイトル画面でLEVEL1〜4の難易度を選べ、全ステージをクリアすると再びエリア12から始まるループ方式。PC版『VOLGUARD』の続編にあたる作品であり、ファミコンらしいシンプルな操作感に“資源管理”という独自の要素を重ねてきた意欲作だった。
ゲームの根幹は、残機制ではなく「被害値」で耐久を表すライフ制と、撃つたびに減っていく「パワーゲージ」の二重構造。無闇に弾を連射すればエネルギーが枯れ、やがてオプションが外れ、BGMがゆっくりと弱まっていく。弾を撃って弱り、敵を倒して回復する――そんな逆説のサイクルがプレイヤーを試す。火力と節約の両立こそ、このゲームの神髄だった。
もうひとつの魅力が“合体と変形”。ステージ途中で仲間機が出現し、追従させたうえで合体操作を行うと、機体は重量感のあるロボット形態に変わる。ロボ時は動きが鈍い代わりに、パンチ攻撃はパワーを消費せず、ダメージの自然回復までもが働く。状況に応じて飛行形態とロボ形態を切り替えながら戦うこの設計は、単なる変形演出を超えて、戦闘のリズムそのものを作る要素になっていた。
パワーアップは多彩だが、同時に癖が強い。連射、レーザー、8方向ショット、そして自機の周囲を回るバリア。どれも強力だが、強化するほどエネルギー消費が激しくなる。特に、レーザーを取ったあとに連射を重ねると貫通性能が残る“ハイパー連射”は、燃費を抑えた裏技的テクニックとして有名だった。また、十字キーをぐるりと回してバリアをぶん回す“ヌンチャク技”も、多くのプレイヤーが体に染み付けた節約術だ。
終盤には、円形のコアを砲台が囲む巨大要塞が登場する。BGMは戦いを駆り立てるようなリズムを持ち、パワーアップ時の短い旋律はいつの間にか口ずさめるほど印象的だった。ロボ形態の重さや敵弾の見づらさなど粗もあったが、エネルギーとダメージを天秤にかけ、撃ち方や回復のタイミングを考えながら進む設計は、今見ても実験的で新しい。
そしてもう一つ、このゲームが当時話題になった理由がある。取扱説明書の後半には、「革命勲章に挑戦!!」というハイスコアキャンペーンが掲載されていたのだ。LEVEL4モードで30万点に到達すると“戦士バッジ”、100万点に到達すれば“革命勲章”がもらえる。応募にはテレビ画面を写真に撮り、同封の応募券に必要事項を記入して400円切手を貼り、ASA400の高感度フィルム推奨――そんな細かい指示まで書かれていた。まだインターネットもなかった時代、子どもたちは必死でスコアを積み上げ、ブラウン管をカメラで撮影して送ったのである。その熱気までが、このゲームの一部だった。
まとめるなら『ヴォルガードII』は、撃つ・溜める・耐える――その三拍子で構成された“省エネ型シューティング”。華やかではないが、操作の一つひとつに意味があり、資源をどう使い切るかという小さな判断の積み重ねが快感になる。いま遊んでも、メカの重みと音の静けさが、当時の熱をそのまま伝えてくる。
NAO:総評
撃てば減る、黙れば詰む。そんなケチくさい設計なのに、気づけば夢中で省エネしてる自分がいる。強くなるたびに燃費が悪くなって、贅沢は敵って感覚を叩き込まれるんだ。ロボに変形しても動きは重いけど、その鈍さに“生き延びる知恵”が詰まってる。音楽は戦闘よりも節制のリズムだ。火力より運用、爽快より手応え。これが80年代に生まれたってのが笑えるよな。未完成だけど、理屈じゃ割り切れない中毒性があるぜ。
出典:NAONATSU:総評
初めて合体した瞬間の重さ、まだ覚えてる。パンチ一つで敵を砕くたび、エネルギーを節約してる自分にちょっと笑ってた。撃つたびに音が弱くなって、BGMがゆっくりしていく。焦るのに、それが心地いい。ロボになって歩くテンポまでゲームの一部になってて、まるで呼吸するみたい。でっかい要塞のコアを撃ち抜いたときの静かな達成感。派手さより、戦い続ける粘りが残る。少年の頃の空想と現実のあいだを、少しだけ覗けた気がしたの。
出典:NATSU📘 説明書資料(ヴォルガードII [dBF-VL])
説明書:Internet Archive 所蔵版(ヴォルガードII [dBF-VL])
※Volguard II [dBF-VL](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します

















































発売日:1985/12/7|価格:4900円|メーカー:デービーソフト|ジャンル:シューティング
NAO: パワーアップ時のBGMで自然と歌が出る。
NATSU: ボスがア・バオア・クー系。ザクでは勝てん。