エキサイトバイクシリーズ
エピソード
トリビア
1984年11月30日、任天堂がファミコン向けに『エキサイトバイク』を発売。定価は5,500円、型番はHVC-EB。モトクロスを題材に、直線レイアウトのコースを四つの走行レーンで駆け抜け、規定タイム内にゴールすれば上位入賞という仕組みだ。操作はシンプルだが奥が深い。Aは通常のアクセル兼ブレーキ、Bはターボで一気に加速する代わりにエンジン温度が上がる。画面中央下のTEMPメーターが振り切るとオーバーヒートしてしばらく動けなくなるが、コース上の《》で示されるクールゾーンを通過すると温度がスッと下がる。左右で車体の向きをレーンごとに切り替え、ジャンプ中は十字ボタンでフロントの角度を調整。着地面に対して平行に合わせれば減速が少なく、角度を誤ると失速したり転倒する。転倒したらAボタン連打で早く復帰できる、という“練習報酬”も気持ちいい。基本はタイムアタックのSELECTION A(T=1)と、CPUライダーが走るSELECTION B(T=2)。後者では前走車に接触すると自分が転倒し、背後から迫る相手を後輪で引っかければ相手が転ぶ、といった“接触の理”も働く。巨大ジャンプの後にフロントを上げて高く跳ぶか、下げて低く遠くへ飛ぶか、といった小さな判断の連続がラップを左右する。
各コースは予選(チャレンジレース)でまず3位以内に入賞し、本戦(エキサイトバイク)へ挑む二段構え。ベストタイムはフェンス看板に表示され、電源を切るまで残るので、居間で交互に挑む時の“目標”になった。コースは1〜5で、各コースを予選→本戦の順に走破。5本目の本戦で入賞すると、同コースを周回して腕を磨ける。画面左下には3位入賞に必要なタイム(3RD)が常時表示され、周回の途中で“間に合うか”を即座に判断できるのも親切だ。路面の“ぬかるみ”やコース外は極端に減速し、そこを避けようとするCPUと肩を並べる場面では接触転倒のリスクが急増。ジャンプ直後にフロントを上げれば高く跳ぶが距離は稼げず、逆にフロントを下げれば低く遠くへ——という性格の違いを体に入れると、障害物の“山のどの位置で抜けるか”まで考えが及ぶようになる。
さらに本作の代名詞ともいえるのがDESIGN(コースエディット)。A〜Sの19種類の障害物やギミック、ラップ数(最大9周)を組み合わせて“自分だけのコース”が作れる。日本のファミコン版では、ファミリーベーシックのキーボード(HVC-007)とデータレコーダ(HVC-008)を接続すれば、エディットしたコースをカセットテープに保存・読み込みできた。この“作って遊ぶ”体験は当時の家庭用では特異で、発売当時5,500円という価格設定にも納得感を与えた要素だろう。海外のNES版ではデータレコーダが未発売だったため保存機能は使えず、のちのバーチャルコンソールやクラシックミニ等で保存が復活した、という地域差もトリビアの一つだ。
また、開発・監督は宮本茂、プログラムは中郷俊彦、音楽は中塚章人。本作で磨いた横スクロールの滑らかな加速・減速の手触りは、のちの『スーパーマリオブラザーズ』へと継承される。アーケードのVS.版(1984年)や、音楽や2人対戦などを強化したディスクシステム版『VS.エキサイトバイク』(1988年)など横展開も盛んで、“走る→学ぶ→作る”の三拍子でロングセラーとなった。NAOの「大ジャンプで地球の重力を感じる」は、まさに着地角の学習が生む実感であり、NATSUの「障害物だけにして自爆マラソン」は、エディットの自由度が当時から“遊び方を増やす装置”として働いていた証拠だ。
NAO:総評
大ジャンプした瞬間に地球の重力を思い出す――飛ぶ前から着地角を計算するようになると、ジャンプ台はただの障害物じゃなく“タイム調整の武器”に変わるんだ。Bターボで欲張ればオーバーヒート、でもクールゾーンを踏めば息を吹き返す。SELECTION Bで相手に触れれば自分が転び、後輪を引っかければ逆に転ばせられる。そんな単純な理が緊張を生むのも良い。倒れてもA連打で即復帰できるテンポが心地よくて、気づけば「もう1周」って言ってる。エディットで弱点練習や悪ノリコースを作れるのも魅力で、単純操作なのに遊び方が果てしなく広がった。80年代の“基礎練ゲーム”の面白さを代表する一本だな。
出典:NAONATSU:総評
障害物だけを並べて自爆マラソンをやった思い出、私もあるわ。でもそれが着地角の練習になっていたのが面白いの。ジャンプ中に少し前傾すると低く遠くへ、後傾なら高く短く――この違いを掴むと通常コースの怖さが減ってくる。SELECTION Aでフォームを整えて、BでCPUと肩を並べる流れは自然なステップアップだった。転んだらA連打で早く復帰、クールゾーンを見つけたらブレーキを緩めて温度を下げる。小さな工夫がそのままタイムに跳ね返ってきて、失敗すら次の周回に生きるのが嬉しかった。エディットで友達と意地悪コースを交換した時間も、競争以上に盛り上がった。基礎を積み重ねるほど楽しくなる、息の長い作品だったと思う。
出典:NATSU📘 説明書資料(エキサイトバイク [HVC-EB])
説明書:Internet Archive(エキサイトバイク [HVC-EB])
※Excitebike [HVC-EB](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet出典:※当時の説明書はInternetArchiveに保存された資料を参照 / 権利は各社に帰属します



















































発売日:1984年11月30日|価格:5500円|メーカー:任天堂|ジャンル:レース
NAO: 大ジャンプした瞬間、地球の重力を感じる。
NATSU: エディットで障害物だけにして自爆マラソンが定番。