光線銃シリーズ
エピソード
トリビア
1984年に登場した『ダックハント』は、ファミコンと光線銃(Zapper)の組み合わせで大ヒットを記録した任天堂の代表作のひとつだ。北米では NES 本体と同梱されるパッケージが数多く出回り、結果的に 2800 万本以上という圧倒的な販売本数を叩き出した。世界中の家庭に「テレビ画面を撃つ遊び」を普及させた作品であり、光線銃ジャンルを一般に定着させた功労者といえる。
そのルーツは 1976 年に発売された光線銃トイ「Beam Gun: Duck Hunt」に遡る。壁にスライド映像を投影し、光線銃で撃ち抜くというアナログ仕掛けの玩具だったが、ファミコン版ではこれを電子的に再構成。飛び立つカモの軌道を撃ち抜くシンプルなゲームへと進化させた。黎明期のゲームでありながら、元のアイデアを家庭用に落とし込む柔軟さが光る。
ゲームモードは大きく3種類。「モードA」では1羽のカモを撃ち、「モードB」では2羽が同時に飛び立ち、狙いを定める難度が跳ね上がる。そして「モードC」ではクレイ射撃が登場。ディスク状のクレイが空中を飛び、素早い反射神経が試される。特にクレイ射撃は後年の競技シミュレーションにも通じる要素で、子供たちにとっては本物さながらの気分を味わえるモードだった。
印象的なのは、ラウンドを失敗すると現れるあの猟犬だ。プレイヤーが一羽も仕留められなければ、画面下から顔を出してクスクス笑う。忠実な相棒でありながら、失敗を嘲笑うという演出は当時の少年少女の心に強烈な印象を刻み、「撃ちたいのに撃てない犬」として語り草になった。IMDb のトリビアにも「犬を撃つことは不可能」と記されており、都市伝説的に広まった「犬を撃てる裏技」は完全な誤解にすぎない。
さらに面白いのは、クレイ射撃を進めてラウンド99をクリアすると、次のラウンドが「0」に戻る仕様だ。いわゆる“キルスクリーン”的な現象で、当時のプレイヤーにとっては隠し要素を発見したような達成感があった。こうしたシステムの隙間が、小ネタとして語り継がれている。
このゲームの犬には「Mr. Peepers」という名前がある、という説もインターネット上では流布している。しかし公式資料には一切記載がなく、ファン発の呼称に過ぎないとされている。にもかかわらず、SNSやフォーラムでは今もその名前で呼ばれることがあり、“公式非公式”が入り混じる典型的なファン文化の一例だ。
『ダックハント』は NES の「ブラックボックス」シリーズを代表する一本であり、今なお懐古的に語られる存在だ。任天堂自身も Switch Online などで配信を続け、さらには『大乱闘スマッシュブラザーズ』では「ダックハント」というキャラクターに昇華され、犬とカモがコンビで戦うファイターとして登場するに至った。かつて嘲笑に苛立った犬が、今ではゲームの“主人公”として世界中のプレイヤーに操作される――この歴史の転換は、まさにビデオゲーム文化のユーモラスな歩みそのものだろう。
シンプルで誰でもすぐ遊べる設計ながら、光線銃ならではの物理的な体験、犬の挑発というユニークなキャラクター演出、そして家庭用ゲーム普及における圧倒的存在感。『ダックハント』は単なるシューティングゲームではなく、任天堂の遊び心と時代の空気を刻み込んだ一本として、今も語り継がれている。
NAO:総評
光線銃を構えて狙うだけ、仕組みは単純なのに撃ち損ねた瞬間に現れる犬の笑い顔が全てを持っていった。本来は相棒のはずなのに、失敗をからかう存在へ豹変する演出は当時の子供たちに衝撃を与え、怒りや殺意すら覚えたやつも少なくなかった。犬を撃てる裏技があると信じ込まれた都市伝説が広まったのも、その苛立ちの裏返しだ。カモの飛び方やクレイ射撃モードは淡々としていても、テレビに銃を向けて実際に引き金を引く体験そのものが革命的で、派手な演出以上に強烈に印象を残した。世界で二千八百万本以上という驚異的な販売本数を記録した背景には、誰にでも伝わるこの普遍的な遊びの力があったんだ。
出典:NAONATSU:総評
撃ち落とせなかったときに笑う犬の姿は、悔しさと同時に強く記憶に残っているわ。本来なら狩りを手伝う相棒なのに、こちらの失敗をからかうように振る舞う演出は、子ども心には少し残酷に映ったの。だからこそ「犬を撃てる方法がある」と信じて試してしまった人が多かったのもわかる気がするのよね。結局できなかったとしても、その過程もまた思い出になっている。カモやクレイ射撃の仕組みは単純だったけれど、家族や友達と交代で遊ぶと不思議と熱中して、リビングが笑い声であふれたものよ。北米では本体同梱で2800万本と圧倒的に広まり、のちにスマブラで犬とカモがファイターとして再登場したときは、懐かしさと同時に“あの頃の光景”が自然と思い出されたの。
出典:NATSU📘 説明書資料(ダックハント [HVC-DH])
説明書:任天堂公式(ダックハント [HVC-DH])
※Duck Hunt [HVC-DH](Famicom)(JP)
区分:説明書/Manual/Instruction_Booklet出典:※任天堂公式によるウェブページです / 権利は各社に帰属します




















































発売日:1984/4/21|価格:4500円|メーカー:任天堂|ジャンル:シューティング
NAO: 笑う犬に殺意を覚える日が来るとは。
NATSU: 鳥より犬が印象に残るのってどうなん。